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日本全国・移動運用記

第61回 夏の北海道移動 ~フェリーからはIC-705で衛星通信~

JO2ASQ 清水祐樹

長期の連休には、広大な北海道を長期間かけて移動運用をすることが一つの楽しみです。例年は、4月末から5月初めの大型連休に実施していました。しかし、2020年は、その時期に移動ができなかったため、8月の夏休みに実施しました。

行き帰りのフェリーにIC-705を持ち込み、運用にチャレンジ

今回の移動運用は、自分の車で移動し、敦賀-苫小牧間はフェリーを利用しました。フェリーに手荷物としてアイコムIC-705を持ち込み、船内での運用にチャレンジしました。

マルチバッグLC-192に2台のアイコムIC-705を搭載して、サテライト通信に対応しました(写真1)。IC-705を2台使用する理由は、1台は送信用、もう1台は受信用として、同時に送受信を行うためです。そのため144/430MHzデュアルバンドのホイップアンテナ(伸縮式ロッドアンテナ)と、デュープレクサを使用しています(図1)。

フェリーは船体の後方しか屋外に出ることができず、サテライトの方向と合わないため、室内でサテライトの運用にチャレンジしました。船体後方には、エンジンや厨房の動力源と思われる機器があり、144MHz帯には強烈なノイズが混入しました。ノイズの中、IC-705のスコープを頼りに自局のダウンリンク信号を発見して周波数を調整し、XW-2BとXW-2Fで合計5局とQSOできました。ノイズが無い場所であれば、QSO数はさらに上積みできたと思われます。

この日は発達した低気圧が日本海を通過中で、海上は波が非常に高く、船体は大きく揺れていました。船内でIC-705の画面を見つめていたところ船酔いしてしまい、歩くこともままならない状態になったため、その後のサテライト運用は断念しました。夕方、船の揺れが小さくなったタイミングで7MHz CWの運用テストを行い、1局とQSOできました。


写真1 IC-705を2台搭載したLC-192を使用して、船内でサテライト通信を運用している様子


図1 IC-705を2台使用してサテライト通信を運用する場合の配線図。実際は上段のIC-705にパドルとイヤホン(CWサイドトーンのモニタ用)、下段のIC-705にイヤホン(受信用)が接続されている。

帰りの運用では、陸地が存在しない珍グリッドロケーターPM88(グリッドロケーターの解説はここを参照)の通過時を狙って運用しました(写真2)。

HF帯のアンテナはコメットのHFJ-350Mを使用しました。アース線は窓枠に接触させただけで、ロッドアンテナの長さ調整によりSWRは十分に下がりました。7MHz CWで、CQ TESTと打っている強力な局が何局か聞こえました。この強さなら、交信できるかもしれないと期待しました。よく聞くと、5NNの後に何かの文字を打っています。これは、コンテストナンバーとして使われている都道府県振興局名略称と気付きました。ということは、海上では対応する都道府県が無く、コンテストナンバーは送出できません。コンテスト呼び回り作戦は、失敗に終わりました。

陸地から離れているため、インターネット環境は一切使用できず、移動運用の情報が掲載されている掲示板等にもアクセスできないので、呼ばれそうな周波数を自力で探すしかありません。コンテストに関係しない10MHz帯もワッチしてみたものの、コンディションが悪いようで、国内向けの伝搬がスキップして何も聞こえませんでした。

7MHz CWのコンテスト周波数のすぐ下で、CQを出すこと1時間20分、結局、帰りの運用では1局も呼ばれることなく終了しました。伝搬のコンディションが特に悪かったことと、室内からの運用では斜め上方の電離層に電波が届きにくかったこと、進行方向に向かって左側の窓際から運用したため、窓の正面になる1エリアや7エリアの一部しか電波が飛ばなかったことが原因と考えられます。


写真2 陸地が無いグリッドロケーター PM88 を通過中の様子。IC-705のGPS機能でグリッドロケーターを確認した。

使用した機材について

LC-192は収納スペースが上下の2段に分かれており、上段にIC-705を収納、下段はIC-705の重さを支えるための仕切り板が付属しています。IC-705を2台収納するには、この仕切り板を取り外して、IC-705の重さで下段がつぶれないように、アルミアングル(断面がL型の棒、幅9mm)をネジ止めして組んだフレームを収納し、その上段に2台目のIC-705を設置しました(写真3)。

空きスペースには12Vのバイク用密閉型バッテリーと、手動アンテナチューナー(将来的にAH-705と置き換える予定)、電源スイッチを内蔵しており、バッテリーからIC-705に12Vを供給して10W出力での運用が可能です。


写真3 2台のIC-705をLC-192に組み込む方法。1辺9mmのL型アルミ棒をネジ止めしてフレームを作り、LC-192の下段に収納した。IC-705の下には、LC-192に付属の仕切り板を敷いた。

多くは市街地の公園で運用。その理由は…

北海道での移動運用と聞いて、大自然の中で大きなアンテナを思う存分展開しての運用を想像した方もいらっしゃるかもしれません。しかし、残念ながら、今回の運用記では、そのような写真はありません。理由はクマ対策のためです。北海道では連日のように、クマの出没情報が報道されています。それを避けるため、運用は人が住んでいる地域の公園、河川敷、海岸などで行いました。

北海道での運用は9日間に及び、誌面の都合で全てを説明することはできません。運用の様子について概要を説明します。ルートの概要を図2に示します。北海道を端から端まで車で移動すると、総走行距離が3,000km近くに達することもあります。今回の移動運用は移動範囲があまり広くなかったため、総走行距離は約1,600kmでした。

アンテナは、種子島移動(2020年9月号 http://fbnews.jp/202009/unnyouki/index.html)で使用したオートアンテナチューナーAH-4と釣竿アンテナ、タイヤベースと同じものを自分の車に設置して使用しました。ただし、混雑した駐車場では、車のモービルアンテナ基台に短めの自作釣竿アンテナ(2013年4月号 http://fbnews.jp/201304/rensai/jo2asq_idouunyou_benrigoods_01_01.html)を装着して使用しました。


図2 今回の移動運用におけるルートの概要

北海道での最初の運用は、苫小牧市の海岸にある公園で開始しました。翌朝は夕張市で運用を開始し、勇払郡(上川)占冠村を経由して、富良野市に向かう途中でも運用しました。前日に大雨が降った影響で、グラウンドなどには水が溜まっていて利用者が少なく、人通りの少ない駐車場で運用しました(写真4)。


写真4 南富良野町での運用の様子

富良野市の後は、芦別市、赤平市、歌志内市と、リクエストが多かった市を順番に回りました。伝搬のコンディションは不安定でありながらも、7MHz帯や10MHz帯で国内の広い範囲が聞こえるようになると一気にパイルアップになりました。

その後、高速道路で小樽方面に向かい、余市郡余市町を経て積丹半島を大回りして、日本海側を南下しました。この辺りには市が無いので、郡での運用が続きます。古平郡古平町、積丹郡積丹町、磯谷郡蘭越町、島牧郡島牧村は1郡1町(または1村)なので需要が多く、パイルアップになりました(写真5)。この頃には、日本海を発達した低気圧が通過し、時には台風並みの暴風雨になりました。それでも、タイヤベースで釣竿を立てるシステムは非常に丈夫で、強風にあおられることも無く安定して運用できました。


写真5 島牧村での運用の様子。サテライト運用時の写真で、釣竿は強風対策のため引っ込めてある。

島牧郡島牧村での運用後は折り返して室蘭方面に向かい、その周辺の市町村で運用しながら東に進み、千歳市に行きました。勇払郡(胆振)安平町で運用した後は、1日目から2日目に通過したルートと重なるので、道東自動車道を使って東に一気に100km以上を進み、上川郡(十勝)清水町を経て帯広市に向かいました。

帯広市ではNEXUSのトランスポンダがONになるとのことで、周囲に高い建物が無い河川敷で運用しました(写真6)。Masacoの「むせんのせかい」2020年9月号(https://fbnews.jp/202009/musennosekai/index.html)で8エリアと交信できたとあるのは、私です。ちなみに、この時の衛星は南から北に移動するパスで、当地で衛星のダウンリンクが聞こえた時には、FB NEWS編集長のJS3CTQ局との交信は既に終わっていました。このように、地理的な理由でMasacoさんの1局目の交信はできませんでした。


写真6 帯広市での運用の様子(NEXUSで交信した日の翌朝に撮影)

帯広市から南下して、えりも岬に向かい、北西に進んで最終目的地の苫小牧を目指しました。えりも岬では大荒れの天気でした(写真7)。しかし、次第に雨は上がって過ごしやすい快適な気候となり、海を見ながら運用を楽しみました(写真8)。北海道に滞在した9日間は、ほとんどが曇りや雨の天気で、太陽が出ていた時間はごくわずかでした。写真を見ても、晴れの日の様子はほとんど見当たりません。


写真7 幌泉郡えりも町での運用の様子


写真8 日高郡新ひだか町での運用の様子

結果

シングルバンドでひたすらCQを出してQSO数を稼ぐ運用スタイルとは違って、電離層のコンディションを判断しながら、QSOのチャンスが多いと予想されるバンドに積極的にQSYしています。そのため、バンド別のQSO数を見ると、日によって電離層の伝搬状態が大きく違ったことが分かります。(表1)

8月10日は10MHz帯のQSO数が多かったにもかかわらず、21MHz帯より高い周波数でQSOできない、特異なコンディションでした。50MHz帯の電離層反射による交信は8月12日の4QSOだけで、8月13日の1QSOは近距離との交信でした。


表1 運用日・バンド別のQSO数

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次号は 11月2日(月) に公開予定

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