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日本全国・移動運用記

第80回 沖永良部島移動

JO2ASQ 清水祐樹

沖永良部島は鹿児島県の九州本土から約500km離れた、大島郡知名町と大島郡和泊町の2町で構成される島です。沖永良部島での1回目の運用は、本連載の2016年4月号で紹介しました。そこから6年が経過して、IC-705による新たな楽しみ方も増えたので、気候が安定している3月に再び移動運用を計画しました。

飛行機にIC-705とモバイルバッテリーを持ち込み、空港での待ち時間に運用

中部国際空港から鹿児島空港へ飛行機で移動し、鹿児島空港で乗り換えて沖永良部空港に向かいます。霧島市にある鹿児島空港での待ち時間では、飛行機で輸送可能な機材を利用して、徒歩で空港の近くに移動して運用しました。

無線機はIC-705で、サテライト通信に対応するため2台使用します。外部電源で出力10Wに対応するため、電源として機内持ち込み可能な容量のPD対応モバイルバッテリー(15V 3A出力に対応)と、15VのPDトリガーケーブルを使用しました(写真1)。


写真1 IC-705の外部電源として使用したモバイルバッテリー(PD 15V 3A対応)とPDトリガーケーブル(15V)。PDトリガーケーブルは大型のパッチンコアに巻いている。

空港の近くの土手に機材を設置し、HF帯のアンテナは自作の長さ2.5m釣竿アンテナ(2013年4月号)をマグネット基台で鉄製の柵に貼り付け、アースは柵の支柱に接続しました。この釣竿アンテナは、車のボディーに取り付けた場合にSWRが下がるようにコイルの巻数を調整したため、ここではSWRが下がらない周波数帯があり、小型の手動アンテナチューナーを使用しました。サテライト用のアンテナと三脚も持参し、現地で組み立てました。これで、総重量10kg以下の機材で、7~430MHz帯とサテライト通信の10W運用が可能になりました(写真2)。

7MHz CWから運用を開始すると、伝搬のコンディションが中途半端で国内の特定のエリアしか伝搬が無く、あまり呼ばれませんでした。10MHz CWは好調で、同時に複数の局から呼ばれることも多くなりました。18MHzでは8エリアを中心に7局と交信できて、21MHzは入感がありませんでした。サテライト通信は、衛星からの信号が弱いHO-113でも、10W出力で問題なく運用できました。

運用中に雨が降ってきて、残念ながら予定の終了時刻より早めに撤収しました。約1.5時間の運用で、ちょうど100QSOでした。


写真2 鹿児島空港近くでの運用の様子。敷物の上に、2台のIC-705、モバイルバッテリー、手動アンテナチューナー等を設置している。

1日目(3月19日) 大島郡和泊町での運用

沖永良部空港は大島郡和泊町にあり、1日目は移動時間が短くて済む和泊町で運用しました。

国内交信がメインなので、本州側が海に面した空き地を利用しました(写真3)。夜には長さ80mの1.9MHz用ダイポールアンテナを設置するため、直線で80mが確保できて、両端を固定する支柱や木がある場所を探してみたものの、すぐには見当たらず、ダイポールアンテナは敷地の境界線に沿って木に引っ掛けながら、折れ曲がった形で設置しました。

日本の端に近い場所、例えば石垣市や八重山郡のような場所で国内向けに運用する場合、1.9MHz帯はダイポールアンテナの地上高を低くして先端が北北東を向くように設置することで、北海道の数局と交信できました。ここは沖縄に比べると本州に近く、アンテナの向きは特にこだわりませんでした。


写真3 和泊町での運用の様子

宅配便で送った荷物をレンタカーに設置し、汗を拭うと16時30分を過ぎていました。この時間帯に7MHz CWから開始すると、パイルアップが大きくなり過ぎて次の予定が立たなくなる可能性があるので、日没が近くなると国内近距離が次第にスキップする10MHz CWから開始して、順に高い周波数へ移動する作戦にしました。

私が10MHz CWを運用する周波数は、ほぼ決まっているので、CQを出すと熱心にワッチされている局からすぐに呼ばれます。ところが、コンディションが不安定で西日本は一部の地域しか聞こえず、20分ほどでパイルアップが終わってしまいました。14MHzの方が広い範囲が聞こえており、10MHzよりも14MHzの交信数が多くなりました。運用中にコンディションが良くなり、18MHzは1エリアが強力に聞こえて一気に42局と交信できて、続く21MHzでも東日本の局と交信できました。

時間の都合で一旦サテライトにQSYして、長時間のパイルアップになると予想した7MHz CWに備えました。しかし、パイルアップは期待したほどではなく30分ほどで静かになり、空が暗くなってから1.9MHzと3.5MHzを運用しました。

2日目(3月20日) 大島郡知名町での運用

まだ暗い早朝に、大島郡和泊町の宿から、大島郡知名町の海岸にある駐車場付きの公園に移動しました(写真4)。

夜明けが近付くにつれて駐車場が埋まっていき、歩く人の姿も多くなりました。この場所は観光ガイドに載っている、日の出が有名な場所のようです。暗いうちに3.5MHz CWの運用を済ませてアンテナを一旦撤収し、崖の下の目立たない場所に再設置して7MHzから上の周波数帯に対応しました。

7MHz CWは前日の和泊町よりもさらに激しいパイルアップになり、70分で116局と交信できました。空は厚い雲に覆われ、朝8時を過ぎても太陽がはっきり見えることは無く、駐車場もいつの間にか閑散としていました。

知名町での運用は、この1日だけを予定していたので、ハイバンドのコンディションが良くなったタイミングで一気に攻勢をかけたいところです。そのためには、まず10MHzでQSO数を稼いでおく必要があります。しかし、コンディションがあまり上がらず、30分ほどでCQ空振りになりました。14MHzにQSYした時にはコンディションが上がってきたものの、同じように30分ほどで空振りになりました。28MHzまでQSYしてみたものの、強い局が時々浮いて、何度もリトライしてどうにかコールサインが判別できる状態で、コンディションが上がってきませんでした。

11時頃から14時頃まで、7~28MHzの各バンドを巡回したところ、7MHzと10MHzでたまに呼ばれる程度で、ハイバンドは交信そのものが厳しく、1時間に30局以下のペースが2時間以上続きました。14時頃になって、21MHzでそれ以前にも聞こえていた8・7エリアの他、1・3・9・0エリアが突然聞こえるようになり、10分ほどで一気にQSO数を伸ばしました。しかし、その後には一変して静かになり後が続かず、14MHzが一段落したところで、昼食のため和泊町の市街地に向かい、和泊町で短時間運用してから再び知名町で運用しました。


写真4 知名町での運用の様子

和泊町では、サテライトの時間の都合で90分だけの運用でした。14MHzと18MHzで前日にできなかったエリアと交信できて、最終的には7~28MHzまでの各バンドで交信できました。

再び知名町に戻り、1.9MHzと3.5MHzのダイポールアンテナを展開しました。夜になると人の出入りがほとんど無くなり、通路や展望台の柵に沿ってアンテナを設置しました。ローバンドも知名町は需要が多いようで、朝の運用と合わせて、3.5MHzだけでも115局と交信できました。

3日目(3月21日) 和泊町での運用

3日目は午前中で終了する予定のため、空港に近い和泊町で運用して、和泊町と知名町の運用時間がほぼ同じになるように調整しました。

7MHzの国内遠距離は、昼間よりも早朝や夕方に伝搬が安定するので、早朝の7MHz CWに狙いを絞りました。そこから28MHzまで上がってみるものの、21MHzから上はコンディションが悪くて国内局がほとんど聞こえず、DX局から呼ばれることも多くなりました。1日目・2日目にも運用しているため、コンディションが上がっても、パイルアップはあまり大きくなりませんでした。3日間を通じて、風が強い時間帯はあったものの天候に恵まれ、予定通り運用を終了しました。

結果

運用日、QTHごとのQSO数を表1に示します。20日朝の知名町3.5MHzが好調で、このバンドはQSO数に大差がつきました。電離層反射で国内と安定して交信できたバンドは、実質的に18MHz帯まででした。


表1 各運用地点でのQSO数。サテライトはCW/SSB、その他のバンドはCW。

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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