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今月のハム

JH3OXM 鳥羽徹さん

2025年4月1日掲載



大阪市東住吉区からオンエアしている鳥羽徹さん。商業ビルや住宅が密集した大阪市の中心部で1kWの免許を受けるのにはかなりの苦労があったと話す。

免許を取得

中学時代にラジオ雑誌付録のゲルマニウムラジオのキットを作ったことがきっかけで電波に興味を持った鳥羽さんは、高校に入学すると無線部に入部し、高一の時に電話級アマチュア無線技士の従免を取得した。まずは学校のクラブで運用を始めたが、その後井上電機製作所(今のアイコム)のFDAM-3を入手し、1971年にJH3OXMを東住吉区の自宅で開局した。

当時鳥羽さんは顧問の先生が無線部と山岳部を兼任していたこともあって、山岳部にも在籍しており、山岳部の活動時にはFDAM-3を持っていき、登山中や山頂でアマチュア無線を楽しんだことを覚えている。その後は電信に興味を持ち電信級アマチュア無線技士も取得したが、無線部には紙テープ式の電信印字機があり、これが送信の練習に大いに役に立ったという。電信級を取得後はTR-5200を入手して、50MHz CWの運用をスタートした。

近鉄に就職

鳥羽さんは高校を卒業すると近畿日本鉄道株式会社に入社、高校で電気を専攻したこともあって、鉄道の信号関係の工事を行う部門に配属された。本心は通信関係の業務に進みたかったというが、信号の業務は電気を扱うことから知識を業務に活かすことができた。かなり後になってからの話だが、鳥羽さんは電気一般の教程を運転士に教育する講習も担当することになった。講習は80時間で1回60-70人を講習したが、そのための資料も作らなければならないし、試験問題も作らなければならず、通常業務の間に行うのはとても大変だったと話す。

鳥羽さんは入社後すぐ、近鉄社員クラブのアマチュア無線クラブJA3YRC(近鉄葛城山クラブ)に入部したが、入社前から入部を誘われており、先輩が入部の書類を書いてくれそれにサインしただけで、どちらかという自動的に入部になったらしい。クラブの話は後述する。

自宅での開局当時は周りに目立った障害物はなかったものの、その後自宅東側の路面を走っていた南海平野線が廃線になり、その廃線跡に高架の阪神高速松原線が開通し、さらに自宅西側の路面を走っていたJR阪和線がこちらも高架になったことで、無線を楽しむのには環境が悪くなっていった。「列車が天王寺駅を発車するとノイズレベルが上がり始め、通過すると下がっていくんですよ」と話す。

鳥羽さんは1.9MHzから1200MHzのオールバンドの機器とアンテナを備え、各バンドで運用しているが、一番好きなのは50MHzという。かつてはアンテナを作って移動運用を行ったり、コンテストにもよく参加した。従来は電信と電話の運用だったが、最近はFT8の運用が増えてきている。また、どちらかというと今は運用よりも、ものを作っている方が楽しいですねと話す。


鳥羽さんが獲得したコンテスト賞状の一部

1kW免許

ある時、クラブの先輩から1アマを一緒に受けようと受験を誘われて勉強を開始した。その先輩は途中で受験を断念したというが、鳥羽さんは勉強を続けて晴れて1アマを取得した。過去に2アマを取ろうと勉強したことはあったが、その頃は仕事が忙しくてそれどころではなく、先輩からの誘いがきっかけで1アマ勉強に腰を上げたことで、結果的に2アマは取得していないそうだ。

1kW免許の取得を目指したのは、自由な時間が確保できるようになった60歳で仕事をリタイアしてからで、準備を始めてから実際に免許を手にするまでに1年以上かかったという。まずは1kW出力に耐えられるHF全バンドのアンテナの準備から始め、設置後も調整と回り込みの対策に時間を要した。アンテナはすべて一人で建設したため、予想以上に時間がかかってしまった。


自宅ビル屋上に設置したアンテナの一部

変更許可受領後は、試験電波を発射してインターフェアの調査を行ったが、半径50m以内にある全戸に、試験電波を発射する日時と目的を記載したチラシを配布して、調査に協力してもらったという。幸いにも、高架の阪神高速ができた時に、近隣のTVはすべてCATVに変わったことが幸いして、TVIの発生はなかった。検査当日は近畿総合通信局から2名の検査官がやってきて、機器の検査や電界強度の測定を行い、合格となった。それ以来、必要に応じて出力を最大にして無線を楽しんでいる。

鳥羽さんは、サテライト通信は経験したが通信範囲が限られているため、将来はぜひEMEをやってみたいと話す。

JA3YRC近鉄葛城山クラブ

話をJA3YRCに戻す。現在は鳥羽さんが会長を務める、JA3YRC近鉄葛城山クラブは、常置場所が標高959m大和葛城山頂の国民宿舎 葛城高原ロッジにあるため、ロープウェイに乗るか、自力登山しなければ行けないこともあって、仕事が終わってから運用できるという状況になく、年に何回か休みの日に行って運用を楽しんだ。

鳥羽さんが入部した当初は、ロッジの屋上にアンテナが常設されていたため、現地まで行きさえすればすぐに電波が出せる状態だった。葛城高原ロッジは一般の宿泊施設も備えており、年に1回はここで泊りがけのクラブ総会が開催され、多いときでは50-60名の部員が集まって、盛大な総会が開催されたという。

その後、諸事情により、常設アンテナが撤去され部室も明け渡してしまったが、代わりに敷地内にある研修センターで備品倉庫が提供されたため、すべての機器を倉庫で保管し、現地に到着したらアンテナを立てて、テーブルに無線機を設置して運用するという形態に変わり今に至っている。部員が減少した現在では、機器のメンテナンスはほぼ会長の鳥羽さん一人で行っている状況だという。

大阪府と奈良県境に位置する大和葛城山のロケーションは抜群のため、50MHzなら6エレ八木程度で1エリアとも交信できるが、大阪平野が一望できるロケーション故、山の下の局に混信や混変調を発生させて迷惑をかけることがあったり、また大和葛城山に移動運用にやって来た局とバッティングすることもあったりするため、毎月のように運用するということは過去にもなかったと話す。

JA3YRCの詳細については2020年にJH1CBX Masacoさんが訪問しているので詳しくはこちらの記事を参照していただきたい。


大和葛城山山頂にて。Masacoさん

海外運用

鳥羽さんは、JARL関西地方本部のメンバーとともに、スリランカに2回渡航した。ただ1回目は残念ながら免許申請が間に合わず観光だけに終わったが、2回目の2018年は4S7XMGのライセンスを取得してスリランカからの運用を行った。不幸にもスリランカで宿泊したホテルはどこもノイズレベルが高く、無線機の電源を入れたらノイズまみれといった状況で、実際の交信には苦労したという。


4S7XMGのライセンス

近況

最近の鳥羽さんは、アマチュア無線を楽しむ以外に、クラシックのコンサートをよく聞きに行っている。特にバイオリンのコンサートが好きで、月に1-2回。大阪だけでなく、京都や神戸にも足を伸ばしているという。

また、まもなく開会となる2025年日本国際博覧会(略称: 大阪・関西万博)会場内にJARLが開設するアマチュア無線局(特別記念局)※のボランティアスタッフを務めることになっている。一般の来場者が会場内にアマチュア無線機器を持ち込むことはできないが、この特別記念局から運用することはもちろん可能で、ぜひ従免とJARL会員証を携えて運用に来てほしいと話す。もちろん、外国人を含むJARL非会員でもゲスト運用が可能。さらにはこの特別記念局はアマチュア無線の普及を目的とし、体験運用にも力を入れて対応すると公表されている。
※2025年3月末時点でコールサインは未定

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