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今月のハム

JH4UHW 井上稔彦さん

山口県周南市の山の上にシャックを構え、アマチュア無線を楽しんでいる井上稔彦さん。子供の頃、乾電池で豆電球を点灯させて遊んでいた際に、乾電池を2個直列にすると明るくなり、並列にすると明るくならないというのを不思議に思って電気に興味を持ったそうだ。

その後、小学生になると、定期購読していた学研の「科学」という雑誌に付属していたゲルマニウムラジオのキットを作ってみたのがきっかけで、電波に興味を持った。中学生になると短波ラジオを入手して、海外短波放送などを受信するBCL、さらにはアマチュア無線を受信するSWLと進み、そして1976年、中学2年の時に電話級(現在の第四級)アマチュア無線技士の免許を取得した。

井上さんはトリオ(現在のJVCケンウッド)のHF機TS-520を入手してJH4UHWを開局、高校時代はアマチュア無線にどっぷり使って、2アマ(第二級アマチュア無線技士)も取得した。

その後さらに1アマ(第一級アマチュア無線技士)も取得して、高出力の免許を得て運用を続けたが、住宅地で運用していたため、ご近所からは大きなアンテナにクレームを受けたり、さらにはテレビの弱電界地域だったため、電波障害にも悩んだ。そして、1991年の台風19号による甚大な被害を受けたことがきっかけとなり、近所に迷惑をかけず、人工ノイズレベルも低く、さらには電波の飛びも期待できる山の上にシャックを構えるべく、それに適した土地を探し始めた。

その後は、休みの日や仕事の合間に探し続け、1996年にようやく現在のシャックを構えている約500坪の土地にめぐりあい、譲ってもらうことができた。「山口県だけなのかも知れませんが、山の登記図面が無く、良い土地が有っても誰が持ち主で、境界がどこなのかはっきりしないので、土地の入手だけでなく、シャックやタワーの建設にも悩みました」と井上さんは話す。

実際にシャックの建設中には、玄関に「人の土地に勝手に家を建てるな」といった張り紙をされたこともあったという。この問題は、この土地の元の地主に間に入ってもらい事なきを得ましたと話す。


掲げられていた張り紙

シャックが建つと直ちにタワーとアンテナの建設を始めたが、電力線の敷設が大きな問題であった。井上さんは知人にもアドバイスをもらい、電力会社と交渉して、一番近い電柱から約2km、いわば井上さん専用線を引いてもらうことができた。動力電源も使用できるようになって複数台のアンプを同時に使用することも可能となり、アンテナと無線機器が整備できた後は、従来の一人で戦うシングルオペレーター部門ではなく、複数人で戦うマルチオペレーター部門に主にエントリーしていった。


シャックの建屋は2022年現在も建設当時のまま

またローカル局のJE4VVM竹山さんと一緒にハイパワー免許を受け、主にDXコンテストへはJE4VVMでエントリー、国内コンテストへはJH4UHWでエントリーしたという。規模が一番大きかった時は、敷地内にタワーを8本建て、当時最大級のアンテナは21MHzの4エレ4段スタックと6エレ2段スタックでした、と話す。


35mのタワーに設置した21MHzの4エレ4段スタック


21MHzの6エレ2段スタック

開設から10年ほどは、熱心にコンテストに参加したが、その後は、仕事が忙しくなったこともありコンテストへの熱が徐々に冷めていった。それに伴ってタワーも少しずつ整理していき、現在の本数は5本となっている。


現在のHF帯の主力アンテナ群


現在のV/UHF帯の主力アンテナ群

これまでの一番の成果は、オールアジアDXコンテストでアジア1位になったことを挙げる。このコンテストでアジア1位になるためには、地理的にヨーロッパに近いいわゆる中近東のアジア局に勝たなければならず、日本から1位になることは当時も今も至難の業である。しかもシングルオペ・マルチバンド部門で大陸1位になると郵政大臣から(現在は総務大臣から)表彰状が授与される。井上さんは国内、国外のマイナーからメジャーまで様々なコンテストにエントリーし、度々上位入賞を果たして賞状や盾などを授与され、それらを子供達に見せても「フーン」の一言だった。しかし、唯一この「日本国郵政大臣」から発行されたアジアの一等賞には感動してくれたと話す。


郵政大臣から授与された賞状

最近の活動としては、無線仲間のリクエストに応え、わざわざ山の中のシャックに来なくても無線局の運用ができるように、3年ほど前にリモート運用システムを導入した。ネットワークの専門家であるJO4JJJ若林さんにも手伝ってもらい、当初はアイコムのRS-BA1で設備を構築、現在は別のシステムを使用している。


リモートによるアンテナ回転システム

ただし、井上さんが自らリモート運用することはほとんどなく、もっぱら設備共用している無線仲間が主に運用している状況となっている。井上さんが無線運用したい際には、今なおシャックまで来ているが、どちらかというと、設備のメンテナンスを行っていることのほうが多いと話す。


現在の主力メンバーのコールサインプレート
ちなみにウイーン在住のJH4RHF田中さんは、オーストリアからの遠隔操作でここからJH4RHFを運用している

アマチュア無線をやってきて良かったこととして、井上さんは、友達が沢山増えたことをあげる。「幼なじみであれば仕事や結婚で縁が遠くなることがありますが、趣味の友達というのは永遠に付き合いがありますね」。気の合う仲間とシャックで集まり宴会をやるのも楽しみの一つという。


左からJO4JJJ若林さん、JE4ETG時重さん、JR4CAU柏原さん、JH4UHW井上さん

井上さんが、今一番力を入れていることは、リモートシステムの安定だ。現在は、設備共用で複数のメンバーが遠隔操作で使っているが、ネット回線の光ファイバーを山の中に約2km這わしているため、熊やイノシシに切られて不通になったことが過去に10回程あったという。切られるたびに切断箇所を見つけて修理しないといけないが、これがまた大変な作業なため、切断箇所が早期に発見できるように一定間隔ごとに中継箇所を設け、またケーブルをできるだけ高い位置に張り直す作業を行っている。

井上さんは、このシャックのことを、「今はキャンプブームですが、ここはテントを張る代わりに小屋があるという感じで、ソロキャンプに来てボーっとすることもできれば、仲間でワイワイすることもできる。まさに夢を叶えられた場所です」と話す。最後に、井上さんは「アマチュア無線には色々と奥深い物が有りますので、今までトライしたことのないジャンルをちょっとかじってみて、夢中になれる物を探したいです。まずは月面反射通信や移動運用にトライしたいと思います」と、将来の目標を話す。


アンテナ説明中の井上さん

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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