今月のハム
2024年10月1日掲載
担ぎ上げ運用への登山中のひとコマ
横浜市青葉区在住の平井玲緒さん。2016年にJI1UPLを開局し、季節を問わず移動運用でのコンテスト参加が主たる活動だ。時には山へ担ぎ上げての運用も楽しんでいる。
平井さんがアマチュア無線を始めたきっかけは、父親が先にアマチュア無線を始めたことになる。以前よりアマチュア無線の存在を知っていた父親がまず2015年に開局、移動運用に行く時に平井さんが同行してそばで聞いているうちに運用の方法を覚えた。
次第に父親よりも受信が上手くなり、父親が送信して受信を平井さんが行うという二人羽織のような運用となっていったという。遠くや近くの色々な地域の人と交信できる面白さを知っていき、父親から「それなら免許を取ったら?」と勧められた。中学2年で第4級アマチュア無線技士の資格を取得し、翌年中学3年の6月に父親との設備共有でJI1UPLを開局した。
初運用は、自作のヘンテナを持って近くの山へ父親と移動運用に出かけ、50MHz SSBでCQを出し沖縄県の局と交信したのが自身での初交信となった。まさかそんな遠くの局と交信できると思っておらず、いきなり沖縄と交信できたことによりどんどんアマチュア無線にハマっていったという。
高校へ進学してからの無線活動も父親との移動運用が多く、当初からの活動であるSOTA(Summit On The Air)の運用では色々な山へ登り山頂での運用を楽しんでいた。この様子はJH0CJH・JA1CTV川内徹氏の連載「Summits On The Air (SOTA)の楽しみ」のその9で紹介されている。
大学院生となった現在、SOTA運用は少なくなってきているが、これまでのSOTA運用でのノウハウを生かした山頂でのコンテスト参加へと運用スタイルが変化している。また学業を優先しているため、コンテストへの参加は、あらかじめしっかり予定を立て、フルタイムで参加できるものに絞っているそうだ。
コンテストへの参加は、移動運用の時は現地付近まで車で移動し、担ぎ上げで行うためシングルバンドでの参加が多く、自宅運用の時はマルチバンドで参加できる設備はあるが、各バンドの運用タイミングなど考慮すべき点が多く、各バンドの性質などをシングルバンドで参加し勉強中という。また時々マルチバンドでも参加している。また平井さんはアマチュア無線のほかに写真撮影の趣味も持ち、運用の合間に星空を撮影することもあるという。
担ぎ上げの荷物の例
この時は、50MHz 4エレデルタループと2エレHB9CVを設置
短時間の運用ではベンチに座って運用
長時間の運用ではテントを設営することもある
自宅でのコンテスト参加の様子
アンテナと星空を狙ったもう一つの趣味である写真撮影
平井さんは季節を問わず運用しており、積雪の中で運用した時には気温が低かったせいで予定していた電池容量では不足してしまったこともあるという。
雪の残る山での運用
この時はIC-9700を担ぎ上げて運用
これまでアマチュア無線をやってきて、特に良かったと感じていることは3つあると平井さんは話す。
「1つ目は、体力がとてもついたことです。コンテストの終夜運用や尋常ではない重さを背負っての担ぎ上げ運用は、アマチュア無線をやっていなかったらきっと一生やることなかった重労働だと思います。アマチュア無線やコンテストをここまで好きになって熱中することがなければ、ここまで体力をつけようと思う機会はなかったと思うので良かったと感じています。実際、現在の大学院では9時登校で夜遅くに帰宅という活動時間が数週間続いても体調を維持することができる体力がついて助かっています。」
「2つ目はコミュニケーション能力の育成です。アマチュア無線という趣味の特性上、交信を通じて会話をすることはもちろん、支部大会や所属団体の集まり、SNSでの情報交換など様々な年代、様々な環境の方とお話する機会があるのは同世代の人たちの中で多い方なのでは? と思います。また、技術的な趣味なので、理知的で理論的な理系トークができることはとても心地よく、また、言葉のチョイスなどいろいろ勉強になっています。」
「3つ目は電気物理に触れられている点です。私は、大学・大学院では化学を専攻していますが、電荷の偏りや材料の物理的性質の理解、また種々の工具の取り扱いなど、アマチュア無線をやっていたおかげで身についていた機械・電気の初歩的な知識・経験が役に立っています。」
また、平井さんはアマチュア無線のいくつかの楽しみ方の中で、コンテストは参加部門を選べばそれなりの結果を収めることができるようになってきたと話す。運用中には「呼んでくれる人を待たせないようなオペレートは」とか、「この時間帯はアンテナをどこに向けようか」など、創意工夫してうまくいった時の達成感は病みつきになってしまうと話す。
また準備できる設備と想像する設備とのギャップ、そして自身が行いたい運用と、他人が行いたい運用との考え方の違いのギャップなどが現れることはまだまだあるそうで、苦労に見えるかも知れないがそれを考えることも楽しいと話す。
現在は大学院の研究活動に力を入れているそうで、今年ももう何度か大学院の活動と無線のイベントが重なってしまい、無線のイベントを欠席しているそうだ。コンテストでの効率的な運用のように、何かゴールがあってそれに向かって試行錯誤するのが好きなので、最近は実験にのめり込んでいるという。それでも決して無線に飽きたわけではなく参加可能な行事にはぜひ参加したいという。
無線活動では現在も国内コンテスト中心での運用で、今年もALL JAコンテストと6m AND DOWNコンテストへはフル参加し、10月に開催される全市全郡コンテストへもフル参加を予定しているそうだ。またローカルコンテストへの乗り込みも積極的に行いたいと話す。
今年の6m AND DOWNコンテストでの設備。このほかに50MHz5エレ八木、マストポールなども運んだ。
平井さんが中高生の時にはOM各局から応援してもらい、現在でも友好的なつながりを持てて大変楽しく、そのおかげで刺激に満ちたアマチュア無線ライフを送らせてもらっていていると話す。それ故、アグレッシブネスに溢れた若いハムへの協力や、OM方への世代間の橋渡しを望む方にはぜひ協力していきたいと話す。
今後の目標は、コンテストでの5QSO/minの達成、あるコンテストの連勝記録の更新とレコードの塗替えなど、時間をかけて達成したいことがいくつもあるという。
また大きな「目標」として、ALL JAコンテストに小笠原諸島から本気参加することと、6m AND DOWNコンテストに3000m級の山から参加することを、前々から考えている。「今行くしか無い!」という条件が揃えば実行する気はあるが、現在はやる気だけしか無い、というのが達成までの課題であるという。
今後は今までと変わらない自分のペースを維持し、アマチュア無線活動をやめることなく続けていきたいそうで、「飽きたりしてそっと消えることはないので、電波が聞こえなくなくなった時は、忙しかったり、他にやることがあるのだろうなぁ、とそっと待っていていただけると嬉しい」と話す。
平井さんがアマチュア無線を始めるきっかけとなった父親は、今は運用よりも無線関係のものを集めるのに夢中になっているそうで、あまり電波を出さなくなっている。平井さんが無線を始めた頃はSOTA(Summit on the Air)の活動を一緒に行っていたが、現在は下火になってしまったという。平井さんは、一人で山に行くの登山経験が浅い上に安全対策も完全ではないため単独登山は控えているが、可能であれば将来またSOTA活動も再開したい、コンテスト以外での無線活動にも幅を広げたいと話す。
そんな平井さんの日々の無線活動は、以下のBlogでつづられている。
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