2013年7月号

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楽しいエレクトロニクス工作

JA3FMP 櫻井紀佳

第2回 無線通信機の構成

2.3.1 振幅変調

ゲルマラジオの所で説明したように、音声の大きさに従って振幅を変化させて変調する方式が振幅変調でAMラジオがよく知られています。受信している電波の強さが分かるラジオで聞いていると、人がまったくしゃべっていない時でもレベル計は振っています。これは周波数的には図のような関係にあり、普通のラジオの電波はしゃべらなくてもキャリヤーと言う電波がでているからです。

短波帯のアマチュア無線はSSB(Single Side Band)と言う変調方式をよく使いますが、これも振幅変調の1つです。SSBと言う電波はキャリヤーを削除していてしゃべらないとほとんど電波はでません。しゃべった時だけ電波がでる省エネになっているのです。

アマチュア無線も最初の頃はラジオと同じ変調方式で電波を出していましたが、キャリヤーを送らなくても音声は届くことが分かり、同じ電力ならキャリヤーのない分多く送れます。巻末のSSBのコラムも読んでください。キャリヤーの上下にできるこのSSB電波はゲルマラジオと同じ「検波」をしても元の音の復調はできず、モゴモゴと言うような音しか聞こえません。元のキャリヤーと周波数関係が同じビートを起こす発振器が必要ですが、AMラジオの電波は真ん中のキャリヤーがその役を果たしているのです。

アマチュア無線では電信をまだ使っていますが電信も振幅変調の仲間です。電信の歴史は古く、技術的にまだ音声を送ることができなかった時代から使われています。近年ではエレクトロニクスの発達でプロの世界では現在ほぼ使われていません。今までの電信より効率がよくエラーも少ない方式がプロの世界では確立していったからです。

電信はよく知られているように、電波を断続して単点と長点に変えてその組合せた符合で情報を送るものです。電信は少ない電力でも遠くまで届くことが知られていてそのため今でもアマチュア無線の愛好家が多いのです。電信のアルファベットの符合は英文の使用頻度の高い文字が短く、使用頻度の低い文字が長く作られていて効率よくなっています。電信の符合を憶えて通信をするのは楽しいもので、国内ではアルファベットと異なる和文の電信がよく使われています。通信の楽しみの幅が広がるので挑戦してみてはいかがでしょうか。

2.3.2 周波数変調(FM変調)

周波数変調では、音声信号の変化に従ってキャリヤーの周波数を高くしたり低くしたりして変調をかけます。FM放送がよく知られていますがアマチュア無線でも使われています。振幅方向には変調がかからないため、振幅変調とは異なり変調によって送信電力はまったく変化しません。この方式は雑音の影響を受けにくいのが特徴です。

普通の雑音は振幅的に大きく変化して受信信号と一緒に入ってきますが、周波数変調方式の復調は基本的に周波数の変化を復調するので振幅系雑音は復調しにくいためです。短所は振幅変調に比べて占有帯域が広く電波の有効利用では不利です。周波数変調の復調はゲルマラジオと同じやり方では復調できません。復調のやり方は後日改めて説明したいと思います。

2.3.3 位相変調

音声信号によって周波数を変えなくてもキャリヤーの山と谷の位置を変化させても変調することができます。ただ、短時間で波形をみると周波数変調なのか位相変調なのか分かりにくいので周波数変調の仲間と言えます。デジタル変調系では重要な意味がありますが、ここでは複雑になるのであまり詳しく説明しません。

■周波数と波長

■ タイムドメインと周波数ドメイン
電気の理論で波形を観測して考える時、時間の流れで振幅などのレベルを見ることと、周波数の流れでレベルを見ることの両方が頭に入ると理解が早くなります。

これを図にするとこのようになります。右の方から見たものを周波数ドメイン、左の方から見たものをタイムドメイン(時間ドメイン)と言います。
右から見る測定器はスペクトラムアナライザー、左から見る測定器はオシロスコープです。どちらの測定器もよく知られていてよく使われます。

■ SSB(Single Side Band)
キャリヤーと呼ばれる振幅も周波数も一定の信号に音声信号で振幅変調をかけると周波数的にキャリヤーの上側と下側にサイドバンド(側帯波)と呼ばれる音声帯域と同じ幅の信号ができます。これは今まで説明してきた図のようになります。

下側のサイドバンドをLSB(Lower Side Band)、上側をUSB(Upper Side Band)と言います。ラジオではキャリヤーを含めて両側のサイドバンドを使いましたが、実はLSBでもUSBでも片方で通信できるのです。その上キャリヤーも不要で復調の時元の周波数関係となるよう発振器の信号を入れてやれば復調できます。このため、10MHzから下のアマチュアバンドではLSB、10MHzから上のバンドではUSBを使っています。なぜ周波数で使い分けしているかは、昔、水晶発振子の周波数や安定度など自由にできなかった頃の名残と言われています。

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