2015年4月号

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連載記事

楽しいエレクトロニクス工作

JA3FMP 櫻井紀佳

第23回 パワー計

最近のメーカー製の無線機に機能として備わっているパワー計の送信出力表示はほぼ正確で、外部のパワー計で測らなければならない場面は少ないと思います。しかし、1.2GHzの受信プリアンプを作った時、送信時にはプリアンプをバイパスする同軸リレーが必要となり、トータルとして送信経路に少し損失が出ているためパワー計が欲しくなりました。

現在は市販のメーカー製パワー計も精度が上がり、誤差が±10%以内のものが多いようですが、ほとんどが通過型のパワー計のため負荷の状態で表示が変わります。終端に高周波特性の良いダミーロードをつければ良いのですが、昔と違って今は適当なジャンクがあまり見当たらなくなりました。新品のダミーロードは数万円もしますので使用頻度の割には高価で買う気になれません。そこで手持ちの部品を活用して、終端型パワー計を作ってみることにしました。


完成した終端型パワー計

1.構成

手持ちのアッテネーターの関係で本体での測定範囲は25Wまでとし、それ以上のパワーの測定が必要な際は外部アッテネーターを付けることにしました。自局の固定局の免許が200Wなので、この出力にも対応したいと思います。

200Wまで計れるパワー計の構成は次のようになりました。使用したRF Detectorの入力許容値が最大100mWであり、10dB、20dBのアッテネーターだけでは減衰量は十分でないため、さらに4dBのアッテネーターを追加することにしました。計算上の最大入力を250Wとして設計しています。


パワー計構成図

2.部品

以前に、古くなって廃棄する測定器の部品の中にRF Detectorが組み込まれていましたので取り外して取っておきました。そのDetector (型番75KA50)は、後で調べてみると高い周波数までの広帯域で良好な検波特性があるようで、同じ型名で他のメーカーも作っているようです。

元々の特性は10MHz~40GHzとなっており、念のため特性を測ってみるとアマチュア無線の帯域では、パワー計に十分使えそうであることが分かりました。このDetectorはジャンクとしてインターネットにも時々出ているようなので、まだまだ手に入れる機会はあると思います。


RF Detector (75KA50)

また、アッテネーターにはジャンクですが20dB、25Wのものを持っていたので、これを組み込みます。このようなアッテネーターは時々ジャンク市などに出ることがあるので、気をつけていると手に入れることができるかも知れません。また、新品はPASTERNAC等ネットの通販でも入手可能ですが、価格が6万円くらいしますので、アマチュア用途に新品を買う人は少ないと思います。


20dB、25W アッテネーター

Detector (75KA50)の特性を測ってみると次のようになりました。グラフに表すと周波数による違いはほとんど感じられないので、これを使ってパワー計を作ると周波数的な誤差は少ないものと思います。Detector (75KA50)の測定は次のように行いました。


測定方法

3.回路

Detectorの出力をそのままメーターに接続してメーターを振らせると負荷が重すぎて良好な特性とならないため、メーターのドライブ回路を付加しました。このドライブ回路はほとんどDetector出力をメーターに表示するバッファーアンプですが、OPアンプの入力抵抗をDetectorの試験に使った負荷の10kΩになるように配慮しました。


パワー計の回路図 (※クリックで拡大します)

このDetectorの検波出力はマイナス電圧のためOPアンプIC3Aの反転入力に入れて極性を反転させます。ゲインは1のため反転した電圧が得られ、その後のIC3Bは非反転入力のためバッファーとして働き、R36、R42とR32で調整してメーターを振らせます。

Detectorの検波出力を比率に書き直すと次の図にようになりました。

メーターの目盛板はこのカーブを取り込みパソコンで原稿を作って貼り付けたものです。下側に10Wフルスケールの目盛がありますが、後面のコネクターの接続を変えて4dBのアッテネーターをバイパスするとこの目盛が使えます。

このパワー計の目盛は比較的精度は良いと思いますが、一番よく使う電力付近で正確なパワー計で校正する必要があります。

内部に使ったアッテネーターは単なるアッテネーターとしても使えるよう後面の接続を考え、20dB 25Wのアッテネーターを使いたいときにはP19、P20を取り外して前面のコネクターから入れてJ18から取り出せば使えますし、更に4dBのアッテネーターだけ使いたい場合はJ16、J17を使います。コネクターは小型で高周波特性の良いSMAタイプにしました。Detectorだけを使いたい時にはJ15から入力してJ23から検波出力が取り出せますし、J23から入力するとメーター回路だけを使うこともできます。

電源は5Vの定電圧回路が入っていますので7V~40V位まで入力可能です。マイナス電源はIC2のLM2662で作っていますが、このICは回路が簡単でマイナス電源を作るのに便利です。この両方の電源で±5Vを作り、メータードライバーのOPアンプに供給しています。

25W以上の電力の測定には外部にアッテネーターを付けることで可能になります。固定局の200W機の測定のため、200W 10dBのアッテネーターを購入しました。このアッテネーターは入力側と出力側が決まっていて間違って使うと焼けてしまいます。実際には200Wの測定の必要性は滅多になく、ほとんど安心感と趣味のため、としか言い様がありません。


200W 10dBアッテネーター

アッテネーターの誤差は普通dBでしか表しませんが、パワーメーターの表示はリニアのため思ったより大きく誤差を感じます。

この200W 10dBアッテネーターは高い周波数まで良い特性をしていますが、入手した目的がHF機の測定であるため、50MHzまでの特性を取ってみました。3.5MHzで0.2dB程度の誤差があり、200Wで5%、10W位多めに表示され、21MHzと28MHzで4、5W少なめに表示されると思います。また、24MHzは一番誤差が大きく7%位少なく表示されそうです。


200W 10dBアッテネーターの特性

4.組立

パワー計のケーシングには、大きさが適当と思われるケースを部品屋さんで買ってきて加工して作りました。前面はメーターと入力のコネクターだけですが、後面にはアッテネーターとしても使え、また検波出力の取り出しとメーター回路への入力もできるようにジャックも取り付けています。内部にメータードライブの回路があり電源が必要なため電源ジャックとスイッチも後面につけました。


パワー計の内部

パワー計もあれば便利です。もしジャンク市等でパワーアッテネーターやDetectorが見つかれば入手しておき、時間のあるときにパワー計を作ってみては如何でしょうか。

dBmと電力、電圧の関係

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