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楽しいエレクトロニクス工作

第76回 マルチチェンジャー

JA3FMP 櫻井紀佳

アマチュア無線で複数の無線機を使うことは珍しくありませんが、それぞれの無線機にマイク、キー、スピーカー等を別々に接続すると机の上が煩雑になり整理したくなります。一組で運用する場合は、送信する無線機を変える毎にマイクやキーを差し替えるのも面倒です。今回は一組の付属品を複数の無線機で切り替えて使用できるマルチチェンジャーを作ってみました。


マルチチェンジャー外観

今回作ったものはシンプルなもので、切替え回路以外に回路らしいものはありません。現在手持ちの無線機はIC-7800、IC-7300、IC-9100、IC-7000等でこれらを対象にして回路を考えました。

今まで類似のものを作ったことはありますが、一番のトラブルはマイク回路への回り込みでした。特に無線機間のグランド電位の違いによって、マイクの接続でグランド側の落とす場所ややり方でノイズが乗ったり音声が崩れたり処置に困ったこともありました。

複数の無線機を使った時に切替えが必要なものは電鍵とスピーカーがあります。キーとスピーカーへの回り込みは少ないと思いますが、無線機間のグランド電位の違いで変な回り込みの可能性もありうるため、無線機側のGND端子をしっかり接続することにしました。

スピーカーも一つのスピーカーを切替えて使いますが、無線機側のジャックから信号を取り出すためプラグを挿入すると、外部から切替えて元のスピーカーに戻せないのでこれはやむをえません。

接続するアイコムの無線機のマイク端子の接続は次のようになっています。

今回は3台の無線機を切替えて使う構成で考えてみます。それぞれ3台の無線機への切替えは、多段のスイッチが入手できればそれだけで切替えできますが、部品屋さんで手に入るスイッチは4回路3接点のロータリースイッチなのでこれで考えます。

切替える回路は、マイク、キー、スピーカーですが、マイクは回り込みを考慮して信号線とグランドの2線を切替え、キーはドットとダッシュの両側の切替えが必要でロータリースイッチの4回路では不足でリレーも使うことにしました。マイク回路の2線とスピーカーをリレーで切替え、それ以外はスイッチの接点を使います。

全体の回路図は次のようになりました。


リレーの電源は当初無線機側のマイク回路のピン2から出ている+8Vを使おうかと思いましたが取り出せる電流容量が10mA程度で、リレーの電流の方が大幅に大きいので仕方なく外部から+13.8Vを入れることにしました。

ほとんどのマイクにはスタンバイスイッチがついていますが、このユニットにも手動のスタンバイスイッチを取付けました。

ユニットの組立は、部品屋さんで買ってきた175mm x 110mm x 40mmのプラステックケースの前面にマイクコネクター、キージャック、ヘッドホンジャック、スタンバイスイッチ、LEDのパイロットランプ等の穴と、切替えスイッチの穴をあけて取り付けます。

後面には、各無線機につなぐマイクコネクター、キージャック、スピーカージャック等の穴をあけて取り付けます。ケースにコネクターなど取り付けた後、テプラでそれぞれの銘鈑を作って貼付けました。


ユニットの前面と後面

マイク切替え用のリレーとスピーカー切替え用のリレーは47mm x 72mmの穴あき基板にハンダ付けしてこの基板をケースに取り付けます。

それぞれの配線をしますがマイク回路だけはシールド線を使いました。このユニットの配線を済ませた内部は次のようになりました。

無線機のマイクコネクターとこのユニットを繋ぐケーブルは、マイク関係を扱っているオプションメーカーでも販売しているようですが、一応作ってみました。本当はマイクの信号線だけシールド線のケーブルが欲しいのですが市販で見当たりません。仕方なくLANケーブル用で8芯が4ペアになったツイストペアケーブルを使いました。MICとMICグランドでペアになるよう配線します。その他の配線は特にペアを気にしなくても良いと思います。現在車に搭載した車載機でマイクの延長コードにLANケーブルを使っていますが特に異常はなく使用可能と思います。

スピーカーとキーのケーブルもそれぞれのジャックに合わせたプラグにハンダ付けしてそれぞれ3組作りました。8Pのコネクターからモジュラーコネクターへの変換コネクターが必要ならアイコムからオプションケーブルとしてOPC-589が用意されています。


(左)マイク用 (中)キー用 (右)スピーカー用

今回作ったユニットを机上の適当な位置に配置すれば、従来は3組必要だった付属品が1組ですみますので、机上をすっきりできると思います。

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