2014年5月号
連載記事
楽しいエレクトロニクス工作
JA3FMP 櫻井紀佳
第12回 周波数カウンターの製作 5
前回までに50MHzまでのカウンターが完成しましたが、それ以上の周波数を測定するためのプリスケーラーを考えてみたいと思います。
高い周波数まで動作可能な1/10プリスケーラーのユニットは、通販で入手可能なものもありますが、価格が数万円もするため手が出しづらいところです。
昔は1/10のプリスケーラーのICは比較的手に入りやすかったのですが、今ではインターネット通販でも入手が難しくなりました。もしこれが手に入ればカウンターの表示を1桁ずらせて読めばいいのです。インターネットでよく見かける1/8分周器だと、そのままでは周波数を読むのが困難です。今まであったプリスケーラーの例を下記に提示しますので、もしどこかで手に入れば挑戦してみてください。
5.1 可能性のあるプリスケーラー
・11C90
昔は有名だった1/10のプリスケーラーで、使いやすく650MHzまでカウントできます。またコンパチ品も何社かのメーカーから出ていたと思います。
・MC12013
モトローラ製のICで、1/10と1/11の2モジュラスタイプで、550MHzまでカウントできます。
・95H90
このICも1/10と1/11の2モジュラスタイプで、350MHzまでカウントできます。
・HD10551
カウント周波数は250MHzまでしか使えませんが、1/10、1/11、1/20、1/21、1/40、1/41のマルチモードになっており1/10が使えます。
5.2 1/8プリスケーラーを使った一方法 その1
1/10のプリスケーラーが手に入れば一番良いのですが、インターネットでも見つけるのが難しいと思います。そこで少し邪道ですが、手に入りやすい1/8プリスケーラーを使い、なんとか高い周波数をカウントする方法を考えてみました。
やり方は1/8の後に1/5を3段重ねてカウントします。1/8 x 1/5 x 1/5 x 1/5にすると1/1,000になります。つまりMHzがkHzになり、430MHzのアマチュアバンドを430kHzに読み替えることになります。問題はkHzがHzになってしまうのでkHz以下の周波数が読めないことです。正確でなくても、大まかな周波数を知りたい時には役立つと思います。
1/8プリスケーラーなら数GHzまでカウントできるものもありますが、プリスケーラーの後に74AC390の1/5分周器を使うのであれば最高周波数の140MHzの8倍、つまり1.12GHzまでしかカウントできないことになります。
HMC363S8G 1/8プリスケーラー HMC434 1/8プリスケーラー
5.3 1/8プリスケーラーを使った一方法 その2
周波数カウンターの本体側も変更しなければならないのですが、もう一つ少し変わった方法もあります。プリスケーラーで1/8した信号は、後のカウンターで8/10だけ測定窓を短くして測ることで同じ値になりますので、ゲートの時間を短縮する方法です。
このようにゲートの時間を短くするには基準発信部を変更して切り替えるようにします。
実際の回路としては次のようになります。
このように変更することで、周波数カウンターの前に1/8プリスケーラーをつけて周波数を一桁読み替えるだけで簡単になりますが、基準発振部の切り替えを忘れると周波数が全く違う表示になってしまいますので、測定時には注意が必要です。
これまで5回に渡って周波数カウンターの製作について書きましたが、実際に作ってみたところ意外に簡単にできたように感じられたため、是非皆さんに製作をお勧めしたいと思います。
これで周波数カウンターの製作記事を終わります。
■周波数の測定方法
周波数カウンターが完成しましたので、実際に測定する方法を考えてみます。
前回で入力部のケーブルなどの説明が抜けていました。色々な場面の測定に対応するために、入力部のBNCコネクターに1.5D2Vや3D2Vのような同軸ケーブルを配線し、同軸ケーブルの逆の端には、下の写真のようにみの虫クリップをつけておくと便利です。
下記で測定方法を紹介しますが、どの方法で行っても注意することがあります。それは入力信号の大きさです。必要以上に大きな信号を入れると入力部のアンプ等が歪み、高調波を発生してしまいますので、測定周波数が2倍とか場合によっては入力周波数と関係のない表示になったりします。一度測定して、その後1kΩ~10kΩ程度の抵抗を入力に直列に入れ、数値が変わらなければ大丈夫ですが、もし数値が半分になれば確実に歪んでいます。もし表示がパラパラして安定しないようなら、逆に入力不足です。
過大入力の歪み波形(左)と正常な波形(右)(IC16A出力)
業務用の高価な周波数カウンターは、AGC (Automatic Gain Control)をかけたりして入力範囲を拡大することで、安定にする配慮がされています。
・直接回路に接続
測定したい回路のどこかに直接接続して周波数を測定します。この場合の注意は完成させた周波数カウンターの入力部は、周波数特性を考慮するための直流をカットしていなかったため、回路を変更します。
直接測定したい回路に接続する場合、注意しなければならないのはその回路に影響を与えることです。同軸ケーブルの容量や周波数カウンターの入力インピーダンス等が影響します。自励発振器等では周波数が変わる可能性が高いので注意が必要です。
・2ターンコイル
図のようなコイルを作っておき、入力の同軸ケーブルの先につけて周波数を測定したい回路に近づけます。近づける距離によって入力レベルが変わるので最良点を探すことができます。特に測定する回路にコイルがあるとこれに結合して測定できます。
なお、この方法は周波数が低いと結合度が不足してうまく測れないことがあります。周波数的には1MHz以上が適当と思います。一般的には1ターンコイルと言われますが、1ターンより2ターンの方が作りやすいです。
・微小アンテナ
図のように、コネクターに非常に短いアンテナとなる線をつけて電界的に結合します。2ターンコイルとどちらが良いかは測定対象物によって異なるため、やってみないと分かりません。アンテナ部分があまり長いとノイズを拾いやすく短いと結合度が足りないため2~3cm程度が適当と思います。2ターンコイルと微小アンテナは作っておくと色々な場面で使用できて便利です。
・長い1ターンにする
送信機の周波数を測る場合は出力が大きいため、30cm~1mの線を1ターンにしてカウンターの入力に接続し、送信機の近くかアンテナに近づけると測定できます。送信機がSSBでは出力が変動して安定に計れませんのでFMかCWでキーを押したままにして測定する必要があります。
この場合はダミーロードを使用するか、誰も出てない周波数を確認して試験電波で行うことが必要です。1ターンのループにする理由は端を開放しているとラジオ等の強力な電波を拾いやすく誤動作しやすいからです。
楽しいエレクトロニクス工作 バックナンバー
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- 第88回 CWスピード
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- 第85回 デジ簡と特小のリンク
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- 第83回 スピーチコンプレッサー
- 第82回 長波JJY受信機
- 第81回 3.5MHzアンテナ
- 第80回 シニアスピーカー
- 第79回 バッテリーアイソレーター
- 第78回 F2A発振器
- 第77回 DDSの動作
- 第76回 マルチチェンジャー
- 第75回 ハンディ無線機用電源
- 第74回 NAVTEX
- 第73回 多用途タイマー
- 第72回 周波数誤差検出
- 第71回 ワイヤレス充電
- 第70回 警報付電圧計
- 第69回 分配器
- 第68回 半田ごてタイマー
- 第67回 可変アッテネーター その2
- 第66回 アンテナマッチング回路
- 第65回 AM受信機
- 第64回 2バンドアンテナ その2
- 第63回 2バンドアンテナ その1
- 第62回 ドライバーSG
- 第61回 144MHz→50MHzダウンコンバーター
- 第60回 音声帯域モデム
- 第59回 位相方式SSB (その2)
- 第58回 位相方式SSB (その1)
- 第57回 AMトランシーバー
- 第56回 グリッドディップメーター
- 第55回 低周波発振器
- 第54回 スイッチトキャパシターフィルター (SCF)
- 第53回 SWR計 その2
- 第52回 SWR計 その1
- 第51回 コードレスキー その2
- 第50回 2トーン発振器
- 第49回 スペクトラム拡散通信 その2
- 第48回 スペクトラム拡散通信 その1
- 第47回 ワイヤレスハンドマイク
- 第46回 自動アンテナ切替器
- 第45回 CI-Vターミナル
- 第44回 案内放送
- 第43回 PEP パワー計
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- 第41回 コードレスキー
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- 第38回 電圧給電アンテナ
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- 第36回 インピーダンスブリッジ
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- 第34回 GPS その2
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- 第30回 続CW復調改善 その1
- 第29回 CQコールマシン
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- 第27回 可変アッテネーター
- 第26回 誘導無線アンテナ
- 第25回 CW復調改善
- 第24回 1.2GHz受信用プリアンプ
- 第23回 パワー計
- 第22回 実験用定電圧電源
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- 第19回 マルチバンド ワイヤーアンテナ
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- 第17回 太陽光発電で無線をしよう! その3
- 第16回 太陽光発電で無線をしよう! その2
- 第15回 太陽光発電で無線をしよう! その1
- 第14回 0-V-1 その2
- 第13回 0-V-1
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- 第11回 周波数カウンターの製作 4
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- 第9回 周波数カウンターの製作2
- 第8回 周波数カウンターの製作1
- 第7回 送信機2 (最終回)
- 第6回 送信機
- 第5回 HF受信機3
- 第4回 HF受信機2
- 第3回 HF受信機
- 第2回 無線通信機の構成
- 第1回 ゲルマラジオ