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楽しいエレクトロニクス工作

第53回 SWR計 その2

JA3FMP 櫻井紀佳

前回、同軸ケーブルを使った方向性結合器を作りましたが、少し結合度が不足してダイオード検波によるSWR計を完成させることができませんでした。そこで昔使っていたSWR計を思い出し、検出部分に「コ」の字型のアルミの引抜材を使って通過型のものを作ってみることにしました。

通過型のSWR計は伝送線路の途中に入れるため、SWR計自体が伝送線路のインピーダンスにマッチングしていなければなりません。同軸ケーブルは、断面は円形が一般的ですが、断面が四角の場合、インピーダンスは次のようになるようです。巻末に掲載した資料で計算できるようにしましたのでご参照下さい。

(近代科学社 電子工学データブックより)

四角の同軸の形状とした方向性結合器にしたいのですが、検出のための結合部分が必要なため四角の一方を取り去った「コ」の字型の形状で検討します。

四角の同軸は上記計算で分かりますが、コの字型にした場合インピーダンスがどのように変わるのか、その資料を持っていません。また、カップリングループのエレメントが与える影響についてもよく分かりませんが、使用する周波数範囲がHF帯であり、波長に対するSWR計の長さが短いのでそれほど影響がないようにも感じます。したがって、これは作ってから考えることにしました。

インターネットで適当なコの字型の材料を探しましたが、丁度いい内寸の13mmのものは見つかりません。できるだけ寸法の近いものを探すことにしました。結果的に希望する寸法に近いものが見つからず寸法も非対称ですが仕方なくこれで進めます。

内側の寸法が計算値と少し異なるため、それに近づけるため、この材料から切り取ったアルミの板をネジ止めして貼りつけました。この材料を120mmの長さに切り、端をL型に曲げてM型メスコネクターを取り付けました。コネクターは四角形のパネル取付型のものを一部切り取って使います。内部導体は計算通り6mmφの銅パイプにしました。カップリングループの結合部分は主要部分の特性の確認をした後、検討します。

試作したコの字型の同軸がどの程度の特性なのか計ってみました。HF帯の低い方から測定できるネットワークアナライザーや方向性結合器を持っていないので、今まで何回も使っているDELICAのAntenna Analyzer AZ1HFで根気よく測定してみます。

AZ1HFの測定端子直接と試作した方向性結合器を挟んだ測定値を比較すると、この方向性結合器の状態が分かると考えました。

測定器の端子に直接50Ωの負荷を取付けて測定すると測定値はもちろん50Ωでリアクタンスは残りません。50Ωの負荷との間に試作した方向性結合器を入れるとインピーダンスがマッチングしていなければスミスチャート上をどちらかに移動してリアクタンスも検知されるハズです。

結果的にどの測定方法でもそれぞれの周波数で負荷の50Ωから大きいズレが検出できず±1~2Ω程度でほとんど測定誤差程度に感じられました。もちろんリアクタンスも検出されません。インピーダンスの変化は少ないということが分かりましたので検出部分の製作を進めます。

カップリングループの結合部分は次のような構成と寸法で作りました。ループのエレメントはアクリル板で作ったスペーサーに2mmφの銅線を通して構成します。


方向性結合器と絶縁用アクリル板の寸法図

2本の銅線の対向する端に500ΩのVR (可変抵抗器) を取付け、反対側には検波用のダイオード1SS108を半田付けしました。1SS108は巻末の特性図に示すようによく使われるゲルマニウムダイオード1N60より検波感度が良さそうです。

方向性結合器の部分ができたので、まずはこの部分だけを試験してみます。アマチュア無線の運用中は常時挿入したままにしたいので移動局の出力50Wを通してみました。測定時の接続は次の通りで、無線機とダミーロードの間にこの方向性結合器を入れます。

RTTYのような連続波で送信し、方向性結合器のVRを調整しますが、まずは反射側の検出電圧が最低になるようVRを回します。その後方向性結合器の方向を逆に接続して同様にVRを回します。調整後VRの値を測ってみると100Ωと103Ωになっていました。VRは200Ωの方が良さそうです。

この測定で双方のダイオードで検出した電圧の結果は次のようになりました。

50Ωにマッチしたダミーロードでは、進行波の電圧と反射波の電圧比が大きいほど優秀な方向性結合器といえます。この方式では周波数によって検出電圧が変化しますが原理的に仕方がありません。しかしグラフにするとほぼ直線になっていました。

SWRの表示に古式の針式メーターを使うとすると、いくつかの不具合点が分かってきました。

フルスケール100μAで内部抵抗1.8kΩのものを通販で見つけましたが、これを使うと1.8kΩ x 100μAでフルスケールが0.18Vとなって1.8MHzの表示が困難です。

またSWRの目盛をメーターパネルに描くための大きな問題に気がつきました。つまり目盛のための任意のSWRをどう作るかということです。そのSWRにする負荷を1W、2Wならカーボン抵抗で用意できそうですが50Wでは無理な話で、50Wに耐える50Ωのダミーロード1つしかありません。抵抗の電力に合わせて出力を下げて測定したのでは検出電圧が小さくダイオード特性が合わないのではないかと思います。

このSWR計の使い方としては、最初に進行波側の電圧でメーターのフルスケールに合わせ、反射波側に切替て目盛を読むことになると思います。そこで前回も使った巻末のSWRの表を使って主なSWRの値を取り出して電圧に変換してみました。

この表で進行波のパワー(%)はSWRに対する進行波の割合を表し、同様に反射波のパワー(%)は反射波の割合を表します。

また、進行波の電力(W)は50W時のSWRに対する電力で、同様に反射波の電力(W)は50W時の電力を表します。進行波と反射波の電圧(V)はその時の電力を電圧に変換したものです。
電圧比(%)は進行波の電圧をフルスケールにした時、反射波の電圧の割合を表したもので、これがSWRの表示になります。

カップリングループの結合度は、28MHzの単純計算では20log10 (2.2V/50V)で-27dB、1.8MHzでは-57dBと低いものになってしまいました。針式メーターでは、SWR 5.0でフルスケールにできるのは7MHzでも苦しく、3.5MHzと1.8MHzは使えないことになります。

直流アンプを付ければ低い周波数でも使えそうですが電源が必要なため止めることにしました。メーターのSWRの表示はこの電圧比の値を使うことにしました。電圧が低いのでダイオードのカーブを補正した方がよいのですが、ダイオードの電流が少なく0.1V程度で誤差は元々不確定な部分が多いのでそのままにします。この値を使ってメーターの目盛をプリンターで印刷しメーターパネルに貼り付けました。

SWR計のケースは方向性結合器、メーター、調整用VR、切替スイッチを取付けるアルミの箱で作りましたが、アルミ板を曲げるのが難しいので0.5mm厚の薄いアルミの板を使って曲げ、一部アングル材を使ってネジ止めして作りました。

実際に無線機とアンテナ間の同軸ケーブルと直列に入れてみました。SWRの表示が計算値だけで実測して校正していないので自信はありません。信用できるSWR計を使う機会があれば比較校正してみたいと思っています。


ワークシートをダウンロードできます。

上記表のD、d、eを変更するとインピーダンスZoが計算されます。


1SS108と1N60の特性

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