2016年3月号
連載記事
楽しいエレクトロニクス工作
JA3FMP 櫻井紀佳
第34回 GPS その2
前回はGPSの電波の届かない室内で使用するための工夫を色々検討してみましたが今回はGPSマイクを使って無線機に接続する方法を検討してみます。
2. GPSマイク
GPSデータが利用できる無線機はアイコムのIC-9100、IC-7100、ID-880等があります。これらに接続できる市販品のGPSユニットを購入してもよいのですが、今回はハンディ機のオプションとして販売されているアイコム社製のGPSマイクをこれらの無線機に接続する方法を検討してみました。
・HM-175GPS
            GPSマイクHM-175GPSはハンディ機ID-92用のオプションとして販売されていますが、残念ながらコネクターが特殊で、これに合うコネクターは一般では入手困難と思われ、そのままではID-92以外では使えません。 

そこで思い切ってマイクコードを切断しコネクターを切り離しました。もし同じことをするのであれば、以後、製品保証が効かなくなることを十分理解した上で進めてください。
マイク本体のネジを外して裏蓋を開け、接続を確認すると次のようになっていました。コネクターのピン数は12個ですが、マイクコードの線は8本なので残りのピンには接続されていません。
この後で説明するHM-189GPSとコネクターを合わせるため、2.5mmと3.5mmのオーディオ用ステレオプラグを取り付けてインターフェースを合わせることにしました。

電源はVDDに+を、GNDに-を接続して、出力に3.3kΩ位のプルアップ抵抗を取り付けます。マイク上のGPSボタンを押すとボタンが点灯します。この状態でGPS電波の届く場所にしばらく放置するとボタンが点滅を始めGPSの動作が始まったことを知らせてくれます。
・HM-189GPS 
            ID-80用のHM-189GPSでも同様に使えると思います。このGPSマイクのコネクターは小型のオーディオ用プラグなので接続は簡単です。なお、このマイクのデータ端子のプルアップ抵抗は22kΩ位にしないと正常に動作しませんので注意が必要です。 

これらのマイクから出力されるGPS信号を利用する無線機(今回はIC-9100)の入力がRS-232C対応のため、マイクの出力信号をレベル変換するために専用のICが必要になりました。そのインターフェースの回路は次のようなものです。
この回路にHM-175GPSとHM-189GPSのマイクを取り替えて接続し試験しました。

            RS-232C変換回路とそのプリント基板 (※クリックで拡大します) 
この回路に使用したICはADM3202で、ICの電源端子に+3.3Vを供給するだけで取り付けたコンデンサーのスイッチによって電源電圧より高いプラスとマイナスの電圧を作り、RS-232Cの規格に必要なレベルに変換してくれる便利なICです。最近はこれ以外にも3.3V系からRS-232Cに変換する便利なICが各社から発売されています。
この基板の電源入力は12V系で、内部に5Vの定電圧ICを持ち、GPSマイクの電源として5Vを供給します。ADM3202の電源3.3Vは手元に3.3Vの電源ICがなかったので、ツェナーダイオードと220Ωの抵抗でこの電圧を作りました。
マイクからのGPSデータ信号はこのICのT2I端子に入力し、T2Oの端子より出力します。入力端子にはプルアップ抵抗を付けています。出力信号はD-SUB 9ピンのRS-232Cの、ピン3のTXDに接続します。RXDではありません。
今回実験したIC-9100へはRS-232Cに変換するデータ通信ケーブルOPC-1529で接続しました。

            OPC-1529
元々、今回の実験はGPS電波の届かない室内と電波の届く屋外とを繋ぐことが目的なので、この間の距離が長く延長ケーブルが必要になりました。そのためGPSマイクとこのユニットの間は、オーディオ用の5mの延長ケーブルを用意しました。ただし、3.5mmコネクターの延長ケーブルは、多くの種類が販売されていますが、2.5mmコネクターのものは見つからず、そのため3.5mmのものを使って2.5mmの変換プラグを購入し、変換ケーブルを作りました。
しかし、最初に購入した5mのケーブルでは少し短かったため、屋外に設置したGPSマイクと接続できず、結局3mのものも追加してトータル8mのケーブル2本で実験することになりました。

            それぞれ3.5mmと2.5mmコネクターに対応した2本の延長ケーブル
ケーブルの誤接続がないことを確認して屋外に設置したGPSマイクのボタンを押します。暫くすると点滅を始めるので、RS-232C変換回路の出力側をオシロスコープでチェックします。出力波形とレベルの確認ができた後、OPC-1529のデータ通信ケーブルでIC-9100接続しました。
オシロスコープの波形は次のようになりました。

            オシロスコープの波形
IC-9100の取扱説明書に従ってGPS接続の設定をすると、IC-9100の画面にデータが現れ正常に動作していることが分かります。IC-9100の通信速度は取扱説明書に従って9.6kbpsに設定する必要があります。
今回はGPSマイクの接続が主目的のため、接続後の無線機の使い方は省略しますが現在地の位置情報は次のように表示されました。

            IC-9100の表示画面
正常に動作すると中央左端にGPSマークが現れ下側にGPSデータが表示されます。これらのデータを使ったアプリケーションや通信は無線機の取扱説明書に従ってください。
今回はケーブルが結構長くなりましたが、GPSマイクに付いているGPSユニットの場所を表示することになりますので、ケーブルの長さは誤差に直接関係ありません。


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 - 第4回 HF受信機2
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