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楽しいエレクトロニクス工作

第69回 分配器

JA3FMP 櫻井紀佳

一つのアンテナで複数の受信機を使いたいことがあると思いますが、この場合は分配器が必要になるため、今回は分配器を検討してみます。

アンテナからの元の信号を2分配すると電力は半分になるため、回路的に全く損失がなくてもそれぞれの出力は-3dBになってしまいます。分配器は高周波トランスを使った下記のような回路がよく知られています。

2分配の場合、トランスT2で2分割した中点のインピーダンスはW/2で50Ωのインピーダンスでは25Ωになります。これにマッチングさせるためT1は50Ω/25Ωで巻線比では√2:1になります。出力側のRは2つの出力のバランスがくずれた時バランスを取るように働きます。3分配の場合も図のようなトランスとバランス抵抗で構成され1つの入力から 3つの出力にそれぞれ分配されます。

これらの条件から、2分配の実験をしてみました。 2分配の場合は2個のトランス、 3分配では4個のトランスが必要です。トランスに使うフェライトコアは大進無線から購入したもので14mm x 23mmのメガネ型です。

T2~T4は中点タップの1:1のものですが、T1は2分配では√2:1で、3分配では√3:1のものが必要です。ただ巻き数が少ないのでその比率を簡単に変えられません。そのため比率を出来るだけ近づけるように作ってみます。2分配は次のように作ってみました。


2分配ユニットとトランス

その周波数特性は次のようになりました。

ご覧のように目標とはかけ離れたNGな特性になりました。何より10dB以内の良好な部分がないのでがっかりしました。コアは高周波用のものですし、巻き線も適当に巻けばそれなりの特性がでるものと思っていました。原因は色々あると思いますが線の引き回しやグランドの取り方など見直しをしても特性の大きな改善はありません。低域が落ちているのはトランスの巻き方やコアの材質かも知れませんし、広域の落ち方は巻き線に原因がありそうです。

T2だけ取り出してトラッキングジェネレーターでトランスだけの特性を取ってみました。本来損失はほとんど無い筈ですが、数dB以上の損失があり線の巻き方など色々変えてみても改善しません。コアの材質や巻き線など基本的な部分の見直しをしないと改善できないことが分かりましたので、一度仕切り直しして出直したいと思います。

トランス型の分配器に失敗したので、次は抵抗型で実験してみます。抵抗型の分配器は次のような回路になります。

この場合は入力に対して出力は2分配では-6dB、3分配では-8.5dBとなり、受信の信号強度Sメーターの目盛りが2分配では1下がり、3分配では1.5下がることになります。この程度では余程弱い信号でなければ分配器を使うことが原因で信号が聞こえなくなることはなさそうです。Sメーターについては巻末の資料をご覧ください。

チップ抵抗を使ったこの回路では周波数特性はそれほど悪くなく、特にフェライトコアのトランスより低域では特性が良さそうです。2分配の場合はSが一つ位下がっても受信にそれほど影響なければこの方法が簡単で良いかも知れません。

抵抗による2分配器の周波数特性は次のようになりました。

左は1MHzから1GHzの特性で、200MHz以下が乱れているようなので拡大したのが右の図です。乱れている原因はよくわかりませんが、それ程影響はないように思われます。

次の図は2分配にした時のSWRの特性です。

SWRは1.1以下と良好で、アンテナアナライザーMFJ-226で測定したため230MHzまでしか測れませんでしたが、 それ以上の周波数でもそれ程悪くはならないように思います。穴あき基板で作った2分配器をプラスチックケースに入れたものは次のようになりました。


2分配ユニット

抵抗を使った3分配でも損失が-6dBから-8.5dBと少し増える以外は特性的に大きな違いはありません。抵抗型の分配器でもチップ抵抗を使えば抵抗値が低いこともあって周波数特性は良好です。トランス型では周波数特性を±3dB以内のフラットな広帯域の特性にするには相当難しいことではないかと感じられました。

受信機の信号強度S

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