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楽しいエレクトロニクス工作

第63回 2バンドアンテナ その1

JA3FMP 櫻井紀佳

1.8MHz/1.9MHz帯や3.5MHz/3.8MHz帯でアマチュア無線を運用する時、バンドとしてほとんど同じように感じながら、1本のアンテナで2つの帯域を運用するのは難しい場合が多いように思います。そこで今回は同一帯域を上下2つに分けてそれぞれバンドと呼ぶことにして、この2バンドでアンテナエレメントをうまく切り替えて使う方法を検討してみたいと思います。3.5MHz/3.8MHz帯はJARLのバンドプランで見ると繋がっているように感じますが、リニアなグラフに落として見ると次のようになりかなり感じが違います。

私の今の環境では1.8MHz/1.9MHz帯のアンテナの設置は難しく、3.5MHz/3.8MHz帯でも40mのフルサイズダイポールでは給電点がシャックとの位置的な無理があり、ツェッペリンアンテナで検討してみます。

なお、今回の実験では2回に分けて次の2つの項目を実験してみます。

1. ツェッペリンアンテナの給電点のインピーダンスの測定
2. 3.5MHz/3.8MHz帯の2バンドアンテナの製作 (次号に掲載)

1.ツェッペリンアンテナの給電点のインピーダンスの測定

ツェッペリンアンテナの給電点のインピーダンスは、今まで書かれたこれに関する記事ではそれぞれ異なっているように思われ、2kΩ位のもの、2.8kΩ位のものや5kΩ位もありハッキリしません。過去に実測した人がいないようなので、実測してみたくなりました。

このような給電点の高いインピーダンスを直接測れる測定器がないため少々工夫が必要です。数100Ω程度のインピーダンスのハッキリしたフィーダーがあればλ/4の接続で正確に低いインピーダンスに変換されるハズなのでスミスチャートで確認できます。

比較的高いインピーダンスのハッキリしたフィーダーとしてすぐ思いつくのは300Ωのテレビフィーダーですが、最近ホームセンターへ行っても300Ωフィーダーを見つけるのは困難なためインターネットで探して購入しました。

この300Ωフィーダーを使ってスミスチャートで見当をつけてみます。次のスミスチャートは1.8kΩのポイントから300Ωのフィーダーでλ/4引っ張るとぐるっと回って50Ωになることを示しています。

この方法では、給電点のインピーダンスが2kΩなら45Ω、5kΩなら18Ωに変換され、手元のアンテナアナライザーで測定可能な範囲に入ります。

ここで必要なことは300Ωフィーダーが正確にλ/4でなければなりません。フィーダーの誘電体の誘電率によって短縮率が変わり実際の長さが変わります。300Ωのフィーダーを3.65MHzのλ/4より少し長い21m位に切り、端に1.8kΩの抵抗を付けて反対の端をアンテナアナライザーで測ってみます。1.8kΩがなければ2.2kΩと10kΩの並列でもOKです。

測定周波数を3.65MHzとして測定端子が50Ωになるようフィーダーをカットアンドトライで調整します。長さがλ/4より長いとプラスのリアクタンスが残り、短いとマイナスのリアクタンスが残るので純抵抗の50Ωがその周波数のちょぅどλ/4の長さになるハズです。

つまりこの測定には抵抗分だけでなくリアクタンス分も測れる測定器が必要で、この連載に度々登場するデリカのアンテナアナライザーで測ってみました。最近のアンテナアナライザーでもアンテナの抵抗分(R)とリアクタンス分(X)の両方の値の測定できるようです。フィーダーは平衡で測定器は不平衡であるためこのアンテナに後で使うつもりの50Ω-50Ωのバランをつけて測りました。


50Ωバラン(上)と測定方法

その結果3.65MHz丁度の周波数ではフィーダーの長さが16.43mになり、このテレビフィーダーは16.43m/20.55m(λ/4)で短縮率が0.8であることが分かりました。

アンテナアナライザーをクラニシのSWR計BR-200に取り替えてSWRを測定すると次のようになり、1.8kΩの負荷からλ/4引っ張ると50Ωになることが確認できました。

次に、このフィーダーを使ってツェッペリンアンテナのインピーダンスを測ってみたいと思います。ワイヤーアンテナのインピーダンスはアンテナの高さやワイヤーの線径に関係あるので先に線材を決める必要がありますが、後で述べるエレメントの切替え回路の関係で1.5D2Vの同軸ケーブルをエレメントに使うことにしました。

2バンドのそれぞれの中心周波数は、上側を3.75MHz、下側を3.55MHzとして進めます。またフィーダーは2バンドに切替えできないので中程の3.65MHzで実験します。

1.5D2Vの同軸を上のバンドの3.75MHzのλ/2の約40mに切ってエレメントとして引っ張ります。ところが実際に40mの線を引っ張ってみると場所の長さが大幅に足りないことに気が付きました。相当な見当違いで7m位短縮しなければ張ることができません。仕方がないので中程に短縮コイルを入れてみます。短縮コイルは電流で有効に働くと思われるので電流が最大となる中央部に入れることにします。

短縮しなければならない7mの長さのエレメントの線を中程で60mmΦの樋に使うプラスチックパイプに巻いてみます。樋のパイプは水道管より肉厚が薄く軽いのでこの用途に良いと思います。ただ、薄い金属で出来ているものもあるので注意が必要です。エレメントに使う1.5D2Vの同軸7mを60mmΦのパイプに巻くと38t、長さ118mm位になりました。

短縮コイルのついたアンテナエレメントを目的の場所に仮に張り、まずアンテナの共振点を測ります。エレメントの端に300Ωテレビフィーダーの片方を接続し、フィーダーの反対の端に2ターンコイルを取り付けます。このコイルにグリッドディップメーターのコイルを近づけてアンテナの共振周波数を測ります。

測定の結果、予測よりはるかに低い3.50MHzであることが分かり、短縮コイルの効果が効き過ぎたようです。300Ωのテレビフィーダーの端の2tコイルからバランに取り替えてアンテナアナライザーに接続してインピーダンスを測定しました。その結果この測定点のインピーダンスは約10Ω位のようです。

これを基にスミスチャートでλ/4回すとこのエレメントの端のインピーダンス、つまりアンテナの端のインピーダンスが分かり、約9kΩ程度と見当がつきました。

ツェッペリンアンテナの給電点のインピーダンスが分かったので、逆にそのインピーダンスから50Ωに変換するにはいくらのインピーダンスのフィーダーにすれば良いのか考えてみます。計算すれば良いのかも知れませんがスミスチャート上でカットアンドトライによって求めてみます。その結果、9kΩのエレメント端のインピーダンスが670Ωのフィーダーでλ/4回すと50Ωになりそうです。従って670Ωのフィーダーを作れば50Ωにマッチングすることが分かりました。

今回、短縮アンテナとなったことと、アンテナの高さを色々変えてみて測定したわけではないので、この測定結果がツェッペリンアンテナの一般的なインピーダンスであるとは言えないかも知れません。

9kΩのインピーダンスは高過ぎますが、共振周波数を3.75MHzに合わせるためコイルをほどいてエレメントを短くするとインピーダンスが少し下がることに期待します。

次回はこのフィーダーと2バンドアンテナについて検討したいと思います。

今回と次回のアンテナの検討に濱田倫一氏著作のスミスチャートソフトMr. Smithを何回も使わせて頂きました。紙面をお借りして御礼申し上げます。

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