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楽しいエレクトロニクス工作

第67回 可変アッテネーター その2

JA3FMP 櫻井紀佳

色々な実験をする時に、アッテネーターが必要になることがよくあります。この連載の「第27回 可変アッテネーター」で既に作っているのですが、その後これを使ってみたところ、電源が必要なために何かの作業ごとにいちいち電源を接続するのを面倒に感じ、電源不要な手軽なアッテネーターが欲しくなりました。

このため電源不要な使い勝手の良いアッテネーターを作ることにしました。


完成したアッテネーター

アッテネーターについて少し整理してみますと、回路の形としてπ型とT型のどちらでも良いのですが、今回は抵抗の取付け上都合の良いπ型にしました。

それぞれの抵抗値の計算は次のようになります。

実際に作るものは、あまり高い減衰量にすると、構造的にアイソレーションの確保が難しい面もあるので、今回はMax 45dB程度にしてみます。1dB、2dB、4dB、8dB、10dB、20dBにそれぞれ設定できれば45dBまで1dBステップで設定できますが、その計算結果は次の通りです。

この表の右側が計算値で左側が近似値となっていますが、近似値というより市販の抵抗で計算値に一番近い抵抗値で構成した場合です。減衰量はこの抵抗値で計算した減衰量で、Zoはこの抵抗値で計算したインピーダンスです。目標値より少しずれますが実用上問題はないように思われます。

このアッテネーターの全体の回路図は次の通りです。

使用した抵抗はチップ抵抗1608です。この抵抗を多数持っていたので、いくつか測定し誤差内でも計算値に近い値のものを選びました。例えば上の図で5.6Ωでも計算値は5.8Ωなので、実際の抵抗は測定値が5.58Ω~5.63Ωのバラツキがあり、5.8Ωに少しでも近い5.63Ωを選びました。

スイッチはプリント基板用の小型6Pトグルスイッチで、部品屋さんでまとめて買ってきたものです。

組立はまず2.54mmピッチの穴明き基板にスイッチをハンダ付けして取り付けます。抵抗は1608(1.6mm x 0.8mm)のチップ抵抗で、それぞれパターンにハンダ付けして配線します。


アッテネーター内部とアルミサッシ材

外観ケースは「第53回 SWR計その2」で使ったアルミサッシの材料が残っていたのでこれを利用しました。長さ85mmに切ったアルミ材を2つ作り交互に重ね合わせます。横のSMAコネクターを付ける部分は、同じ材料から内寸に合う15mmに切り出したL字型のアングルを使います。

前面部はスイッチのピッチに合わせて取付け穴を開けてスイッチを取り付けます。両側のSMAコネクターはその寸法に合わせて穴あけしますが、4つある取付け穴のうち、対角線の2つだけで取り付けることにしました。また一つの穴にグランド用の細い銅板も取り付けます。

出来上がったので、両側のコネクターにトラッキングジェネレーターを接続して測定してみました。

予想していたより良好な特性のように感じられます。

今回作ったアッテネーターは、主に100MHzまで使えるものを目指しましたが、使用したチップ抵抗もこの周波数位までは特性が良好なようです。数100MHzになると単純な純抵抗でなくなり少し特性が乱れます。また、スイッチの周波数特性にも懸念がありますが100MHz位までは良好なようです。

このアッテネーターの最大入力電力は、使用した抵抗がチップ抵抗1608のため100mW程度です。これ以上の電力に対応するには、固定減衰量のパワーアッテネーターが必要です。
移動局の送信出力50Wまでの対応を考えると、50Wから100mWまで27dBの減衰が必要で、仮に30dBとすると20dB 50W、と10dB 2Wのパワーアッテネーターがあれば対応できます。これらは高価な機器ですが、入手できれば応用範囲が広くなります。


固定減衰器例 (左)50W 20dB (左)、 (右)2W 10dB (右)  (パスタナック社広告より)

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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