2014年7月号
連載記事
楽しいエレクトロニクス工作
JA3FMP 櫻井紀佳
第14回 0-V-1 その2
2.1 実験結果
前回の回路に沿って組み立ててみました。使用する基板は後で色々回路を追加することを見越して少し大きめのものにしました。この回路ではコイルからタップが複数出ますが、別巻きのコイルを追加するより作りやすいと思います。電源は5Vですが内部に定電圧電源のICは含まれていません。
この0-V-1受信機の同調回路は昔から持っていたグリッドデップメーターで測定すると前回の計算に近い同調範囲になっていました。回路は簡単なので接続をチェックして電源を入れてみます。調整用のVRは一番電圧の低い方向から電圧を上げていくとコレクター電流が増加してきます。
ところが、ある所からいきなり発振を始め、VRを一番下げても発振が止まりません。何かベースにプラスの自己バイアスがかかり、一度電源を切らないと発振が止まらないことが分かりました。ベース電圧とコレクター電圧のデータが取りたかったのですが、これではデータが取れないのでベース側の抵抗R2を10kΩから1kΩに変更すると一応データが取れそうです。
この状態でベース電圧とコレクター電圧の特性を取ってみました。室温は常温なので一応25℃としています。その特性は下図のようになりました。
ベース電圧VBEが0.6Vになるといきなり発振してその後はデータが取れません。コレクター電圧は、ベース側のバイアス回路への電流のため、R7の330Ωの電圧降下でコレクター電流が流れなくても3.91Vになっています。R7はコレクター電流が流れると電圧降下が大きくなり、結果的にベース電圧が下がって少し直流的負帰還がかかります。
真空管式の0-V-1は少し発振気味にすると感度が良くなるので、出力にクリスタルイヤホンをつけ、アンテナを繋いで真空管式同様に色々調整してみましたが、残念ながら全く何も聞こえません。発振直前と発振後と両方でテストしましたが受信できず、コイルのタップも少し変えてみましたがあまり大きな変化はありません。真空管式の0-V-1は発振ぎりぎりにしてSSBやCW(電信)が聞こえたものですが、今回は同じようにはなりませんでした。
発振している時のコレクター電圧はわずか0.3V位ですが安定に発振します。この時コレクター電流は1.3mA位です。発振は同調回路がついているので7MHzの正弦波に近い波形になっていました。
実は受信がうまくいけば、ベースのバイアス電圧を変えて自励発振させて、CWの送信機も作ろうと思っていましたが、受信がうまくいかなければ送信機を作る意味がないので残念です。
まだ何か別の方法が残っているかも知れませんが、最初に書いたように真空管の時代と違って複雑になったり調整が難しかったりした場合、少数のトランジスターを使って受信機を作る意味がありません。
今回は残念ながら諦めざるを得ませんでした。
■ グリッドデップメーター
真空管の発振器で外付けのコイルに同調回路が近づくと、電力が吸収されてグリッド電流が急峻に下がり、同調点を見つけることができます。この他に発振器としても利用でき、例えば高周波ブリッジの信号源とか、マーカーに利用するなど昔の便利グッズの一つでした。自作する人も多くいましたが、DELICAの商標で三田無線研究所のものが正確で有名でした。
楽しいエレクトロニクス工作 バックナンバー
- 第89回 温度/湿度計
- 第88回 CWスピード
- 第87回 雨量計
- 第86回 IC-705用電源
- 第85回 デジ簡と特小のリンク
- 第84回 エレキー
- 第83回 スピーチコンプレッサー
- 第82回 長波JJY受信機
- 第81回 3.5MHzアンテナ
- 第80回 シニアスピーカー
- 第79回 バッテリーアイソレーター
- 第78回 F2A発振器
- 第77回 DDSの動作
- 第76回 マルチチェンジャー
- 第75回 ハンディ無線機用電源
- 第74回 NAVTEX
- 第73回 多用途タイマー
- 第72回 周波数誤差検出
- 第71回 ワイヤレス充電
- 第70回 警報付電圧計
- 第69回 分配器
- 第68回 半田ごてタイマー
- 第67回 可変アッテネーター その2
- 第66回 アンテナマッチング回路
- 第65回 AM受信機
- 第64回 2バンドアンテナ その2
- 第63回 2バンドアンテナ その1
- 第62回 ドライバーSG
- 第61回 144MHz→50MHzダウンコンバーター
- 第60回 音声帯域モデム
- 第59回 位相方式SSB (その2)
- 第58回 位相方式SSB (その1)
- 第57回 AMトランシーバー
- 第56回 グリッドディップメーター
- 第55回 低周波発振器
- 第54回 スイッチトキャパシターフィルター (SCF)
- 第53回 SWR計 その2
- 第52回 SWR計 その1
- 第51回 コードレスキー その2
- 第50回 2トーン発振器
- 第49回 スペクトラム拡散通信 その2
- 第48回 スペクトラム拡散通信 その1
- 第47回 ワイヤレスハンドマイク
- 第46回 自動アンテナ切替器
- 第45回 CI-Vターミナル
- 第44回 案内放送
- 第43回 PEP パワー計
- 第42回 容量計
- 第41回 コードレスキー
- 第40回 電子バグキー
- 第39回 お酒沸かし
- 第38回 電圧給電アンテナ
- 第37回 パルスジェネレーター
- 第36回 インピーダンスブリッジ
- 第35回 GPS その3
- 第34回 GPS その2
- 第33回 GPS その1
- 第32回 鹿おどし
- 第31回 続CW復調改善 その2
- 第30回 続CW復調改善 その1
- 第29回 CQコールマシン
- 第28回 PINダイオード
- 第27回 可変アッテネーター
- 第26回 誘導無線アンテナ
- 第25回 CW復調改善
- 第24回 1.2GHz受信用プリアンプ
- 第23回 パワー計
- 第22回 実験用定電圧電源
- 第21回 色々なフィルター
- 第20回 1人でタワーを建てる
- 第19回 マルチバンド ワイヤーアンテナ
- 第18回 省エネシステム
- 第17回 太陽光発電で無線をしよう! その3
- 第16回 太陽光発電で無線をしよう! その2
- 第15回 太陽光発電で無線をしよう! その1
- 第14回 0-V-1 その2
- 第13回 0-V-1
- 第12回 周波数カウンターの製作 5
- 第11回 周波数カウンターの製作 4
- 第10回 周波数カウンターの製作 3
- 第9回 周波数カウンターの製作2
- 第8回 周波数カウンターの製作1
- 第7回 送信機2 (最終回)
- 第6回 送信機
- 第5回 HF受信機3
- 第4回 HF受信機2
- 第3回 HF受信機
- 第2回 無線通信機の構成
- 第1回 ゲルマラジオ