2014年3月号

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楽しいエレクトロニクス工作

JA3FMP 櫻井紀佳

第10回 周波数カウンターの製作 3

前回に続いて周波数カウンターの部分について説明していきます。

3.1 7セグメントLED

表示に使用するLEDはドライバーのTC4511と合うカソードコモンのものが必要です。今回、部品屋さんで買ってきたものは次のようになっています。

ドットはDP1とDP2の2つありますが今回は右側のDP2しか使いません。COMが2つありますが内部で繋がっていて各エレメント共通のカソードになっています。ピン4、5、12は内部に繋がっておらず空きピンです。各エレメントは直列に330Ωの抵抗を入れて電流を決めています。このLEDは左右両側に端子がありますが、上下にあるものも販売されていて接続さえ合えばどちらでも使えます。また、表示色は赤、青、緑、黄色、橙等ありますが好みのものを選べばいいと思います。

3.2 信号増幅部

信号増幅部は、測定する信号と信号に乗ってくるノイズの分離が本当は相当難しいのですが、できるだけシンプルに考えてみました。初段の2SC2026は昔よく使ったトランジスターで手持ちがあったので使いましたが特性は良好で利得帯域幅積ftは2.2GHzまで延びています。いまでもインターネットの通販で手に入れることができると思います。

入力のダイオードは入力から大きな信号が入ってきた時の保護用で、仮に入力に100Vp-pの信号が入ってくるとR47で約200mAに制限されます。1S955は最大200mAまで大丈夫です。ただその時にはR47の電力が20Wにもなり小さい抵抗では瞬時に焼けてしまいます。R47は、瞬間的な保護用でありそのまま直接AC100Vに繋いだりしないで下さい。

ダイオードが逆並列に入っているのは入力が交流のため両方向に効かせるためです。普通の信号はダイオードの順方向電圧の±0.4Vまで歪まないことになります。このダイオードの寄生容量と抵抗R47で周波数特性は少し悪くなってしまいます。


コンデンサーの周波数特性

C1とC2の容量の違う2つのコンデンサーが並列に入っていますが、これは周波数特性をできるだけ広くするための工夫で出力側のC3とC4も同様です。1uFのケミコンは周波数の低い方では有効ですが高い方で特性が悪く、また1nFのコンデンサーはその逆で高い方は良いのですが低い方は容量不足になってしまいます。

トランジスターは広帯域で使えるため、エミッタは直接グランドに落とした方が特性が良いのでベースのバイアスは電圧帰還にしました。バイアスは直流的に+5VからR49を通してコレクターに繋がり、コレクターとベースの間にR48が入っています。もし温度の変化などで電流が増えるとR49の電圧降下が大きくなりコレクターの電圧が下がります。この電圧が下がるとR48を通して流れるベース電流が下がり、従ってコレクター電流が下がる方向になります。これにより変化が押さえられることになります。R49の抵抗負荷だけでは高い周波数でゲインが下がってくるのでL1によって高い周波数を少し持ち上げました。


信号増幅部の周波数特性

この後のロジックICのインバーターによる増幅は前回のインバーターの所で説明した通りです。またその後のシュミット回路も前回で説明済みですが、少し詳しく見てみますと、この回路では立ち上がる方向で2.75V、立ち下がる方向で2.25Vとなり、その差の0.5p-pのノイズまでカウントしないことになります。

3.3 タイミング部

カウンターの動作を考えてみます。まず規定の時間例えば1秒間カウントして、そのカウントした数値を一定時間保持するラッチに移して、その後カウンターをリセットして元に戻せばいいことになります。これをくり返せばいいのでこのタイミング回路を考えてみます。
このタイミング回路を抜き出したものは次の通りです。


(上の回路図は、タイミング部の説明用で最終の回路図とは部品番号やピン番号が一部異なります)

この動作は次のようになります。CK1はカウントする時間でここでは1秒(1Hz)になっています。またCK2はこのタイミング回路のクロックで今回5Hzとなっています。それぞれのフリップフロップがリセットされた状態からスタートすると、IC23Bの5番ピンはHでアクティブであり、CK1が通ってIC20Aの3番ピンに入力されQ1が立ち上がります。IC20Bの12番ピンDはまだLのためQ2は反転していないのでQ1だけが反転します。

Q1がHの間IC22CがアクティブとなってSigの信号をCTに出力しカウンターに送ります。次のCK1の信号でQ1がLとなってQ2がHになり、Q2はLとなるのでIC23BのCK1が止まります。Q2がHになると後のQ3とQ4のCLがHとなってカウントを始めます。

次にまずCK2の信号でQ3が反転してHになると、IC16Aで反転されたCK2の信号とIC22AのNANDにLで出力されます。この信号はカウンターのデータをラッチするためのストローブ信号です。CK2をIC16Aで反転する理由はタイミングを半周期ずらすためです。CK2の次の周期でQ3が反転し、その時Q4も反転します。Q4がHになると、IC23AがIC16Aで反転したCK2の信号をCLに出力します。CLはカウンターをクリヤーして元に戻す信号です。

次のCK2の周期でQ3が再度HになるとQ4もHのためIC22BのNANDがLを出力します。このCC信号でQ1とQ2がクリヤーされ、Q2がLになってQ3もQ4もクリヤーされて全部のフリップフロップが元に戻ります。このような動作をくり返してタイミング信号を作り出します。

ここまでの説明は1秒間のカウントの状態でしたが、6桁では999,999Hzまでしか表示できません。それより高い周波数を6桁で表示するために目標とする50MHzまで表示すると59,999,9となって100Hz単位でカウントすることになり、カウントの窓は10msで従ってクロックのタイミング周期は100Hzを選択します。

3.4 カウンター部、ラッチ部、表示部

カウンター部の動作は簡単で、上の回路図ではタイミング部IC22Cの8番ピンの出力信号CTをカウントします。その後STの信号でラッチ部に送り、その後のタイミングで発生させるCL信号によってカウンターをクリヤーします。
当初の予定ではHF帯の30MHzまでとしましたのでカウンターのICは74HC390を予定していましたが、50MHzに変えたためこのICではカウントできず一番先頭のICだけ74AC390に変更します。これに伴って入力のゲート部分も74HC00から74AC00に変更します。

ラッチ部に送られたデータは内部でデコードされてLEDドライバーを通してで表示します。実は前回提示しました回路図ではまずいことに気が付きました。前回の回路では、1Hzつまり1秒単位の表示では999、999まで表示すると述べましたが、1kHzの周波数を測定すると001、000と表示され上位の不要な0も表示してしまいます。これを消すために、上位の0を検出してブランクにする回路が必要です。表示ICのTC4511には表示をブランクにするBl端子があるのでこれを使います。0の検出は入力のBCD(Binary Coded Decimal)のABCD出力のorをとって反転します。(つまりABCDのどれかがHであれば0ではないことになります)


上位桁ブランク回路

3.5 基準発信部

基準発振部は周波数カウンターの初回(第8回)に書いた通り40MHzの発振器を1/4と1/10で1MHzして使用します。1/4にする74AC74は特性通り40MHzの信号を1/4に分周してくれました。通販で買った40MHzの発振器は説明書には温度特性は±30ppmで年間の経時変化が3ppmになっていましたが、他の正確な周波数カウンターで図ってみると常温では1ppm以下位の良い特性になっていました。

3.6 電源部

電源部は単純に直列型の3端子レギュレーターで7805を使います。電源電圧は+5.0VだけなのでIC 1つだけです。3端子レギュレーターの入力には100nF(0.1uF)~330nF(0.33uF)を入れないと発振する場合があるので、そのメーカーのデータシートに従って下さい。また、入力電圧は出力電圧より1.5V以上高い電圧が必要なものが多いのですが今回は入力電圧に12Vを予定していますので問題ないと思われます。しかし入力電圧が高いと入力電圧と出力電圧の差が大きくなり、これが損失となって熱が増えるため放熱器を大きくする必要があります。つまり入力の12Vから必要な電圧6.5Vを差し引いた5.5V x 電流が無駄な電力として放熱されます。今回はIC24の下に銅板を取りつけて後面のアルミ板に熱を逃がすようにしました。


(IC24の下にある銅色のものが銅板)

今回は、周波数カウンターの各回路の説明をしましたので次回は組立をして行きたいと思います。また、先に説明しました上位0ブランク回路を追加しましたので変更した配線図を提示します。部品の番号は打ち直したので説明文と合わない部分がありますのでご了承ください。


最終的な回路図 (クリックで拡大します)

■数字表示の歴史
今回の周波数カウンターは7セグメントLEDを使いましたが、最初に登場した周波数カウンターの表示はデカトロンかニキシ管(Nixie Tube)だと思います。表示器の歴史は今まで色々なものがあり、その浮き沈みは部品メーカーに大きな影響を与えていました。

・デカトロン
デカトロンをご存知の人は少ないと思います。丸い頭の真空管の頭から見えるように0から9に相当する電極があってどれか1つがネオン管のように光っています。各電極と電極の間に2つのグリッド電極があって順番に電圧をかけると次の光る電極に移ります。0から9の数値はこの真空管を取り付ける外側のパネルに書いてありました。インターネットで検索すると結構ヒットしますのでそちらでもご覧下さい。

・ニキシ管
今でもこれを使った時計を売っているようですが、真空管全盛の頃の表示器です。数字は0から9まで別々の電極になっており数字の形をしています。前から見ると奥まで数字が並んでいますが、光らない数字は細い電極のため前の電極があまり邪魔にならないようになっています。真空管の横から見るタイプと丸い頭の上から見るタイプと両方作られていました。ネオン管と同様な仕組みのため電極には170V位の高圧がかかっていました。従って表示の色はオレンジ色に限られています。これもインターネットで多く見られます。

・蛍光表示管
日本で発明されたこの表示管も基本的に真空管で電卓等に大量に使われました。電極にかける電圧も低く表示色が緑のため評判はよく周波数カウンターにもよく使われ、一時は生産が間に合わない状態が続いたそうです。まだ生産もされているようでインターネットで多くの資料が見られます。

・LED
今回の周波数カウンターにも使用する表示器で腕時計や電卓にも使われました。現在も多く使用されているため、部品としても販売されていて今回の周波数カウンターに使用しました。


LED表示の関数電卓

・液晶
現在多分一番多く使われている表示器と思われます。消費電力が少なく優れた表示器ですが、今回の周波数カウンターのように桁数を好みで変えたりすることが困難でまた専用ドライバーが必要なため実験等に使い難いです。


液晶表示の関数電卓

・フィラメント表示器
非常に珍しいのですがフィラメントに電流を流して光らせる表示器で「ミニトロン」という商品名で販売されていました。消費電力も大きく切り替えスピードが遅い等マイナス面が多くあまり流行りませんでした。

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