2013年10月号

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連載記事

楽しいエレクトロニクス工作

JA3FMP 櫻井紀佳

第5回 HF受信機3

次にBFOが目的の周波数になっているかを確認しました。調整用の半固定抵抗を回して最大値と最低値の周波数を確認した所、ほぼ使える範囲に入っていました。多分皆さんが作ってもあまり大きな差は出ないのではないかと思われます。周波数の測定器がないとよく分からないと思いますが、半固定抵抗器を半分位にしておくと良いと思います。

一応できあがったので実際に受信してみましょう。本格的な受信機と比較するため、図のようにスイッチで切り替えて聞いてみました。アンテナはアマチュア無線用の広帯域ノンラジアルアンテナCHA250BXを使用してみました。

目的どおり受信できるか確認するため、最初にIC-7800でよく聞こえるアマチュア局を受信して、アンテナスイッチを切り替えて試作受信機でその局を探します。ポリバリコンのつまみの直径をできるだけ大きくしないと調整し難いのですが、できるだけゆっくり回して聞こえる局に合わせます。するとIC-7800で聞こえた局と思われる局が聞こえました! アンテナスイッチを切り替えて確認したところ間違いありません。この受信機でもアマチュア局が聞こえます。最初に心配していたSSBの復調も一応大丈夫のようです。また、振幅制限回路による歪みも了解度が落ちるほどは感じられません。ただ、ノイズと混信のような色々なものが混ざって聞こえるので、性能が十分でないことが分かります。

アマチュア無線用、もしくは受信用のアンテナを建てていない場合は、最初は5m位のビニール線を張って受信してみてください。ただしこのビニール線では7MHzに同調していないため、強い局しか受信できないかもしれません。できれば7MHz用のアンテナを建てた方がベターです。モービル用のアンテナも販売されているのでうまく取り付ければ使えます。

なお、7MHzのアマチュアバンドはコンディションの良い時と悪い時があります。悪い時には受信機がうまく動作していないのかコンディションが悪くて受信できないのかが分からないことがあるので、もしうまく受信できなければ、時間をおくか、日を改めてもう一度受信してみてください。

この受信機の問題点と性能アップについて考えてみましょう。

・AGC (Automatic Gain Control) 回路
実は振幅変調であるSSBを受信するためには欠かせないAGC回路が付いていないのです。AGC回路はどうすればいいか考えてみます。

・イメージ信号
前に説明したように、高周波のフィルターの特性が、イメージ信号を1/1,000未満にしか落とされていません。このため、イメージ信号も一緒に受信している可能性が高いです。もう少し改善する必要があります。

・感度
ICの振幅制限回路の関係でゲインを大きくできませんでしたが、高周波増幅器を追加してもう少し感度を上げたい所です。

・選択度
試作したIFのフィルターは3段に増してもまだ十分な特性になっていません。もう少し特性の良いフィルターが欲しいと思います。

・BFO
今回は簡単にするためにCMOSロジックの発振回路で波形は矩形波になっています。このためと思われる不要なビート音があちこちで聞こえます。きれいな正弦波に変えたい所です。

AGC、イメージ信号、感度の改善策を考えたのが次の図です。高周波増幅回路を別に作って今までの回路の前に付けます。2SC1815は低周波低雑音増幅用としてよく知られていますが、7MHzでも十分使えます。高周波ゲインは20dB程度あるので感度は多少上がる可能性があります。また、AGCを付けたので最大-60dB程度AGCが効きます。このAGCコントロール信号はメイン基板のIC1 NJM2552の16番ピンRSSIの端子から取り出します。また、高周波増幅の入力側に高周波フィルターを追加したので全体の特性が改善し、イメージ信号も-60dB程度まで落とせると思います。


高周波増幅回路とAGCコントロール回路


AGCコントロール信号の取り出し

選択度を上げるには、特性のよいフィルターをインターネットや部品屋さんで探すしかありませんが、幸いにもネット販売でも入手可能なようですので適当なものを探してください。ただし特性の良いセラミックフィルターは正確に455kHzとなっているものが多く、もし取り替えた場合はBFOの周波数もそれに合わせて再調整する必要があります。R11のVRで調整できなければ、R13を470kか1M位に変えてみてください。


インターネットで見つけた特性のよいセラミックフィルター

BFOは今の回路の出力にLPFを追加して高調波を低下させ、正弦波に近づけて妨害波の受信を減少させます。コラム「波形」も参照ください。元の波形は矩形波ですがフィルターを通すと正弦波に近づくのが分かると思います。


出力にLPFを追加したBFO


BFO出力波形

これらの改良で性能も少しは上がると思います。これで最初の目的であるアマチュア無線局の信号を受信する受信機ができあがったことになります。メーカー製の受信機に比べると性能は劣るかも知れませんが、自分で作ったものは、作る楽しみとまた愛着も生まれます。

次回からは送信機に挑戦したいと思います。

■ ICの規格
ICやトランジスターの規格表を見る時、一番初めに気をつけなければならないのが絶対最大定格です。これはこの範囲を超えると壊れる可能性が高く部品メーカーは保証しませんという規格です。特に電源電圧に注意しましょう。

注1、にある通り瞬時でも越えてはならない規格です。但し、0.1Vでも越えるとどのICも100%壊れるかというとそのような意味ではなく、壊れる可能性が高いのでメーカーは保証しませんという意味です。この定格の後に動作範囲とか推奨動作範囲という項目があり、それに従って使います。

■ 波形
正弦波は純粋なその信号だけでできていますが、正弦波以外の矩形波や三角波等の波形は基本波とその高調波から構成されています。矩形波のような上下対称な波形は奇数次高調波で構成され偶数次高調波を基本的に含んでいません。上下非対称な波形は偶数次高調波を含んでいます。

理想的な矩形波は無限大までの奇数高次調波が必要ですが、高調波の次数を上げると理想波形に近付いてきます。7次高調波までを合計すると矩形波に近付くのが分かると思います。

■ 選局操作
最近の市販無線機のダイヤルは、ロータリーエンコーダーという回転によってパルスを発生させる部品と、内部に組み込まれているマイコンによってそのパルスをカウントし、シンセサイザーで周波数を作り出し、それを液晶表示するものがほとんどです。

昔のダイヤルは同調ツマミの向こう側は今回の試作と同じようにバリコンが付いていて、自励発振の発振器によって同調していました。従って周波数を正確に読むことが難しく、またダイヤルの数値と実際の周波数を合わせるのが大変でした。

有名なコリンズ社の発振器はバリコンではなくコイルのインダクタンスをコアの動きで変化するようになっていました。ダイヤルと周波数をあわせるための補正機構がついていました。(PTO = Permeability Tune Oscillator)

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