2013年6月号
連載記事
楽しいエレクトロニクス工作
JA3FMP 櫻井紀佳
第1回 ゲルマラジオ
1.4 配線
コイルのエナメル線の端の絶縁部をカッターナイフで削って剥がします。そこに先にハンダ付けをしておきます。塗料を剥がしたエナメル線の端を木の台に載せてその上からハンダゴテの先で軽くおさえ、エナメル線が熱した頃にヤニ入りハンダの先を押しつけるとハンダが溶けて線の先にハンダがつくのが分かると思います。同じようにコイルの反対の端もハンダをつけておきます。
配線用にビニール線は120mm位の長さのものが1本必要です。取っ手のついている側のバリコンの端子とハンダあげしたコイルの片方の線と配線のビニール線の3本を軽く捩ってバラバラにならないようにします。そこへ軽くハンダゴテの先を当てて熱してきた頃やり入りハンダをつけます。きれいに光った状態でそれぞれの線に流れ込めば成功です。 このようにして、ビニール配線とゲルマダイオード、ゲルマダイオードとイヤホンジャックの端子、バリコンの端子とコイルの端をイヤホンジャックのアース側にハンダづけするとできあがりです。
1.5 動作
買ってきたビニール線は5mでしたが、配線に使った残り4m数10cmをアンテナ線に使います。この線をコイルとバリコンをつないだ所につないでバリコンを動かして放送局に同調させると放送が聞こえます。このアンテナ線の端は部屋の家具など高い部分に引っかけておきます。
同調とはコイルとバリコンで共振させることで、共振すると信号が大きくなります。その信号をゲルマダイオードに通すと一方にしか通さないので図のような信号になります。この信号はクリスタルイヤホンの容量で平滑され変調されたもとの信号が取り出せ、この信号がクリスタルイヤホンの振動板を動かして音が聞こえます。バリコンの取っ手のついている方の反対のネジの端子を手で触れると音が大きくなります。身体がアースとして働くためです。
実験した場所は奈良県でNHKの大阪放送局の送信所から直線で17km程度と少し遠く、間に山がありあまりいい条件ではありません。送信所に近いとよく聞こえます。送信電力の大きい 放送局が聞きやすいと思います。全国の電力の大きい放送局は次のようになっています。(100kW以上)
場所 | コールサイン | 放送局 | 周波数 | 出力 |
札幌 | JOIK | NHK第1 | 567kHz | 100kW |
札幌 | JOIB | NHK第2 | 747kHz | 500kW |
秋田 | JOUB | NHK第2 | 774kHz | 500kW |
東京 | JOAK | NHK第1 | 594kHz | 300kW |
東京 | JOAB | NHK第2 | 693kHz | 500kW |
東京 | JOKR | TBSラジオ | 954kHz | 100kW |
東京 | JOQR | 文化放送 | 1134kHz | 100kW |
東京 | JOLF | ニッポン放送 | 1242kHz | 100kW |
大阪 | JOBK | NHK第1 | 666kHz | 100kW |
大阪 | JOBB | NHK第2 | 828kHz | 300kW |
福岡 | JOLK | NHK第1 | 612kHz | 100kW |
熊本 | JOGB | NHK第2 | 873kHz | 500kW |
■周波数
周波数は1秒間の振動数を表します。周波数の単位は[Hz]で[ヘルツ]と読みます。大きさを表す単位は、単位のコラムを見てください。
例えばNHK東京第1放送の594kHzはkが1,000倍のため毎秒594,000回振動していることになります。
電波は毎秒約30万km伝わるため、これを周波数で割ると波長になります。NHK東京第1放送の波長は300,000,000/594,000 = 約505mとなります。
■単位
長さや周波数など数値の単位は次のようになっています。これから先もこの単位を使いますので覚えてください。k(キロ)は1,000倍で103と表します。またμ(マイクロ)は100万分の1で10-6と表します。
■クリスタルイヤホン
クリスタルイヤホンは圧電効果のあるロッシェル塩等でできていますが、最近のものはこのロッシェル塩ではなく同様な効果のあるセラミックでできたものがほとんどのようです。ロッシェル塩のものとセラミックのものは特性も違い、セラミックの方が静電容量は大きく、感度はロッシェル塩の方がいいように感じます。昔はほとんどロッシェル塩でしたが、湿度に弱い性質があり最近はセラミックのものが多くなったのだと思います。
イヤホンの耳栓の部分がネジになっているので、左に回すとはずれて中が見えます。左側の真ん中にハンダ付けされているものがロッシェル塩のもので、右側のなにもなく平たいものはセラミックです。
圧電効果とは、その素子に電気をかけると機械的に変化し、機械的に力をかけると電気が発生するもので、検波されたラジオの信号の電圧をかけるとそれに従って素子が変化するので音がでてきます。
■バリコン
周波数を合わせる可変容量のことをバリコンといいます。元はバリアブル・コンデンサー(Variable Condenser) からきたものですが、英語でコンデンサーのことはCondenserと言いません、Capacitorと言います。英語のCondenserは凝縮器や冷却器になってしまいますが、バリコンとはよくできた和製英語と思います。コイルも昔から使われていますが、最近はインダクターと言うことが多くなりました。
昔のバリコン
■ハンダ付け
ハンダ付けは練習しないと最初からきれいにつきません。ポイントはハンダをハンダ鏝の先につけてそれでハンダ付けをするのではなく、ハンダ鏝でつける部品を暖めてからそこへハンダを持っていって溶かす感じでつけることです。
うまくついていない時は、部品がはずれたりまたはカサカサのかたまりのようになったりします。うまくできた時には部品の足にハンダがなじみ、ピカッと光るようにきれいにつきます。上手になるよう練習しましょう。
楽しいエレクトロニクス工作 バックナンバー
- 第89回 温度/湿度計
- 第88回 CWスピード
- 第87回 雨量計
- 第86回 IC-705用電源
- 第85回 デジ簡と特小のリンク
- 第84回 エレキー
- 第83回 スピーチコンプレッサー
- 第82回 長波JJY受信機
- 第81回 3.5MHzアンテナ
- 第80回 シニアスピーカー
- 第79回 バッテリーアイソレーター
- 第78回 F2A発振器
- 第77回 DDSの動作
- 第76回 マルチチェンジャー
- 第75回 ハンディ無線機用電源
- 第74回 NAVTEX
- 第73回 多用途タイマー
- 第72回 周波数誤差検出
- 第71回 ワイヤレス充電
- 第70回 警報付電圧計
- 第69回 分配器
- 第68回 半田ごてタイマー
- 第67回 可変アッテネーター その2
- 第66回 アンテナマッチング回路
- 第65回 AM受信機
- 第64回 2バンドアンテナ その2
- 第63回 2バンドアンテナ その1
- 第62回 ドライバーSG
- 第61回 144MHz→50MHzダウンコンバーター
- 第60回 音声帯域モデム
- 第59回 位相方式SSB (その2)
- 第58回 位相方式SSB (その1)
- 第57回 AMトランシーバー
- 第56回 グリッドディップメーター
- 第55回 低周波発振器
- 第54回 スイッチトキャパシターフィルター (SCF)
- 第53回 SWR計 その2
- 第52回 SWR計 その1
- 第51回 コードレスキー その2
- 第50回 2トーン発振器
- 第49回 スペクトラム拡散通信 その2
- 第48回 スペクトラム拡散通信 その1
- 第47回 ワイヤレスハンドマイク
- 第46回 自動アンテナ切替器
- 第45回 CI-Vターミナル
- 第44回 案内放送
- 第43回 PEP パワー計
- 第42回 容量計
- 第41回 コードレスキー
- 第40回 電子バグキー
- 第39回 お酒沸かし
- 第38回 電圧給電アンテナ
- 第37回 パルスジェネレーター
- 第36回 インピーダンスブリッジ
- 第35回 GPS その3
- 第34回 GPS その2
- 第33回 GPS その1
- 第32回 鹿おどし
- 第31回 続CW復調改善 その2
- 第30回 続CW復調改善 その1
- 第29回 CQコールマシン
- 第28回 PINダイオード
- 第27回 可変アッテネーター
- 第26回 誘導無線アンテナ
- 第25回 CW復調改善
- 第24回 1.2GHz受信用プリアンプ
- 第23回 パワー計
- 第22回 実験用定電圧電源
- 第21回 色々なフィルター
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- 第19回 マルチバンド ワイヤーアンテナ
- 第18回 省エネシステム
- 第17回 太陽光発電で無線をしよう! その3
- 第16回 太陽光発電で無線をしよう! その2
- 第15回 太陽光発電で無線をしよう! その1
- 第14回 0-V-1 その2
- 第13回 0-V-1
- 第12回 周波数カウンターの製作 5
- 第11回 周波数カウンターの製作 4
- 第10回 周波数カウンターの製作 3
- 第9回 周波数カウンターの製作2
- 第8回 周波数カウンターの製作1
- 第7回 送信機2 (最終回)
- 第6回 送信機
- 第5回 HF受信機3
- 第4回 HF受信機2
- 第3回 HF受信機
- 第2回 無線通信機の構成
- 第1回 ゲルマラジオ