2014年1月号

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楽しいエレクトロニクス工作

JA3FMP 櫻井紀佳

第8回 周波数カウンターの製作1

1.2 基準発振部

冒頭で述べたように周波数は1秒間の波形の数なので、この1秒間が正確でなければ周波数を正確に測れません。この基準発振として一般的に水晶発振器が使われます。この発振器には水晶発振子が使われますが、水晶発振子とはどのようなものでしょうか。

水晶発振子は色々な形のものがあります。無線等でよく使われるものは古くはHC18/U、HC49/UやHC23/Uタイプでしたが、現在は他の部品が表面実装タイプになり水晶発振子も表面実装タイプが多くなっています。


最近の水晶発振子

更に昔の水晶は形も大きく水晶の薄い板をカーボランダムの粉で磨いて周波数を合わせたりしていました。水晶の板を磨くと周波数は高い方に動き磨きすぎると元に戻らないのですが、怪我をした時に塗る薬の赤チンを塗ると周波数が下がると言われていました。今ではこのようなことをする人はいませんし、大きさや精度の問題で現実に合わず昔の話です。


昔の水晶発振子

水晶発振子の内部には水晶の薄い振動板が入っています。水晶は純粋な二酸化シリコンの結晶で普通は石英と呼ばれ、透明なものを水晶と呼んでいます。水晶は電圧をかけると機械的に歪み、機械的な力をかけると電圧が発生する圧電素子として知られています。

水晶には結晶軸があってその軸から切り出す角度で発振子にした時に温度特性が変わります。無線通信関係にはATカットがよく使われますが、ATカットの温度特性は次の図のような3次曲線をしているため常温で0に近くなるようにしており低温と高温で変化が大きくなっています。3次曲線では使用する温度範囲が比較的広く取れるため無線通信機などの温度特性を押さえたい機器によく使われています。切り出す角度が僅かに変わるだけで温度特性が変わるのが分かると思います。

また、BTカットは2次曲線をしており腕時計の発振器などに有効です。腕時計は体温によって温度変化が少なく、一番いい頂点を体温近くのポイントに合わせると時計の誤差を少なくできます。

下のグラフの縦軸がppm (1/100万)なのですが、仮に10ppm変化するとHF帯の7MHzでは70Hz程度ですが、1.2GHzの使用では12kHzとなり、隣の通信チャンネルへ越境することになります。このため測定器では信用できる測定値にしようとすると温度特性、精度とも変化の少ないものが必要となります。

一般的に水晶発振子の温度特性は、市販のものでは±50ppm位のものが多く、これではHF帯でも30MHzの測定誤差が±1.5kHzにもなり、測定値を信用しづらくなります。水晶発振子で±10ppm以下のものを見つけるのは難しいと思いますので、精度の高い発振器として販売されているものを探したいと思います。

水晶発振器の内部には、水晶発振子が入っていますが、温度補償をしたり周波数を正確に合わせたりして精度と温度特性がよくなっています。高度の温度補償をした発振器では恒温曹に入っているものもあります。これは通常気温が到達しない50°C等までヒーターで水晶発振子の回りの温度を上げて一定にします。昔の恒温曹はサーモスタットのスイッチで切り替えるものが一般的でした。温度が変わらなければ発振周波数は安定して取り出すことができます。


水晶発振器 (秋月電子の広告より)

今回は秋月電子の40MHzの発振器を購入して使うことにしました。この発振器は年間のズレが±3ppm程度なので相当優秀ですが、温度特性は0°~60°で30ppmとなっており測定器用としては不十分です。やはり±10ppm以下のものにしたいところです。特に40MHzにする必要はなく、もっと低い周波数の方が分周するICが楽になるのですが、出力は1MHzにしたいため、分周しやすい周波数が必要です。例えば23MHz等では1/23にすることになり、素数のためやり難いです。整数で割り切れないものは1MHzにできないので使えません。

周波数カウンターは色々な発振器を使う可能性と、将来的に外部からの正確な基準が使えるなどの理由で、タイミング部の入力を1MHzとしています。このため、この40MHzの発振器は1/40に分周しなければなりません。ロジック回路の動作と説明は後でしたいと思いますが、この1/40分周器の構成と回路は次の通りです。


分周器の構成


基準発信、分周回路

この周波数カウンターに使うCMOSロジックICは74HCシリーズを使うつもりですが、最初の1/4分周器は入力が40MHzのため74HCシリーズでは周波数的にカウントできません。74HCシリーズより高い周波数までカウントできる74AC74を使用します。

今回の回路では発振器の出力40MHzを74AC74で1/4にして、その後74HC390で1/10にしますが、その1/10の分周は最初に1/5にして後で1/2にします。その理由は出力波形が上下対称なデューティ50%の波形にできるからです。上下対称な波形の方が使いやすくまた気分的にもすっきりします。温度特性が±30ppmでは少し不満でもう少し特性のいいものを探したいと思います。もし見つかれば途中で回路変更するかも知れません。

このカウンターのほとんどの部分はロジックICで構成されているため、次回はロジック回路の説明をしたいと思います。

■周波数測定器
現在では周波数の測定に周波数カウンターを使うのは当たり前になっていますが、昔は周波数を正確に測るには色々苦労がありました。

有名な周波数測定器にBC-221と言う名前の米軍で使われていたものがありました。これはヘテロダイン周波数計と言って、内部の発振器と測定する信号をミックスして耳で聞こえるビート音を出して、そのビート音が0Hzになる発振器の周波数を読むものです。

発振器にはダイヤルがあり、ダイヤルの目盛と周波数の関係が書かれたチャートがついています。チャートの表は十分細かくできないので、表の数値と数値の間は比例配分して計算して出します。


BC-221 周波数測定器

単純にビート音を出す方法では、20Hz以下の音は耳で聞こえないので±20Hz以下の測定はできないことになります。しかし発振器に1kHz等低い周波数で変調をかけるとLSBとUSBに信号ができるため、その2つのビート音が同じ周波数1kHzの音になるところが0であるとして測ったものです。これをダブルビート法と言っていました。

また、発振器の校正は、別に水晶発振器がついていてそれを分周して高調波を発生するようになっています。例えば100kHz毎にビートを出して校正します。

昔はHF帯の5MHzとか10MHz等にJJYと言う正確な標準電波が出ていて、この水晶発振器はJJYと校正します。それでも電波の伝播の問題等があって精度は1ppm位が限度でした。最初に周波数カウンターで周波数を測定した時、なんと便利なものだろうと感嘆したものです。

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