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海外運用の先駆者達 ~20世紀に海外でアマチュア無線を運用した日本人達~

その98 今回の記事は1995年のヨーロッパです 1995年(2)
「あの人は今(第23回)」JR1KWR大久保明氏

JA3AER 荒川泰蔵

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今回の記事は1995年のヨーロッパです

今回は1995年の第2回目で、ヨーロッパで運用した方々の紹介です。筆者はそのヨーロッパの英国に駐在していた時代ですので、ヨーロッパの各地で運用された方々のアンケートから記事にまとめつつ、英国を基点にそれらの国々へも出かけて運用しておけば良かったと、少々残念に思っています。尚、今月の「あの人は今(第23回)」は、ヨーロッパが大好きなJR1KWR大久保明氏の紹介です。

1995年 (トルコ TA1ZG, TA1ZH)

JA3ULS木村千良氏は、XYLのJL3GOIまりさんと共にトルコで免許を取得し、イスタンブールとテキルダで運用したと、手紙と共にアンケートをよせてくれた(写真1~3)。「トルコの免許申請につきましては、知人のTA1AL, Mustafaが私達本人よりも熱心にやってくれました。1エリアでの免許の申請及び発給は、ボスポラス海峡に面したイスタンブールのPTTオフィスで行われます。申請に必要な書類は、1. 無線従事者免許の英文証明(局免許の英文証明は不要でした)、2. 写真2枚(5 x 5cm程度)、3. 必要事項を記入した申請書でした。私達の場合は、無線従事者免許の英文証明は、公証人のTA1FA, Suatの手でトルコ語に翻訳したものを一緒に提出したので、免許発給作業がスムースに行われたものと思います。私達は、TA1/JA3ULSと、TA1/JL3GOIになるだろうと思っていたのですが、TA1ZGと、TA1ZHのコールサインとなり大喜びでした。理由はよくわかりませんが、察するところ、1. 日本人という事で、特別に長期滞在者のコールサインを発給した。このことはかなり可能性があります。とにかくイスタンブールに限らず、どこへ行っても彼らはヨーロッパ人よりも日本人に対して極めて親切でした。2. 免許発給時のコールサイン割当規則が、各地方のPTTに周知徹底されていない、(しかし、TA1/ホームコールでQRVしている局もあり、この可能性は少ないと思います)、といったところでしょうか。リグやアンテナの持ち込みに関しては、特に調べられることもなく、全く問題ありませんでした。私はTA1ZGで14MHzと21MHzのSSBで約200局とQSOしましたが、TA1ZHはYL局でヨーロッパの男性にモテモテで、約500局とQSOできました。尚、免許状には“トルコでの滞在をお楽しみください”といった一文が添えられていたことを付け加えておきます。また、テキルダでの運用は、TA1FA, Suatの別荘からでした。(1995年12月記)」

尚、JA3ULS木村千良氏は、当誌2020年7月号の「今月のハム」に紹介されており、JL3GOI木村まりさんは、当誌2020年1月号に「YLハムのカンボジア日記」と題した記事を特別寄稿しておられます。


写真1. TA1ZGとTA1ZH木村千良氏、まりさんご夫妻のQSLカードの表と裏。


写真2. TA1ZGとTA1ZH木村千良氏、まりさんご夫妻とそのトルコの友人達との共同QSLカードの表と裏。


写真3. (左)TA1ZG木村千良氏の日本の免許証のトルコ語翻訳証明書と、(右)TA1ZG木村千良氏の免許状。

1995年 (チェコ OK8RTO)

JH6RTO福島誠治氏は、国際会議でチェコを訪れた際、特別に取得されたOK8RTOで、プラハから10, 14MHzのCWとSSBで運用したと、アンケートを寄せてくれた(写真4)。「レーザー関連の学術会議、Advanced Laser Technology '95での招待講演の折り、宿泊したビジネスホテルから運用致しました。アンテナは短縮DPを窓から出し、50Wで細々出しましたが、選り好みをせずに15カントリー、3大陸取れました。非常に狭い範囲に、アクティビティの高いカントリーが多数あるヨーロッパならではという感じです。プラハ市内はほぼ常時10MHz帯以上でS9のノイズがありました。上記は7時間の運用成果です。(1995年10月記)」


写真4. OK8RTO福島誠治氏のQSLカードの表裏。

1995年 (デンマーク OZ/AH0AV)

JH6RTO福島誠治氏は、国際会議でチェコを訪れ、OK8RTOで運用した帰途、デンマークのコペンハーゲンからOZ/AH0AVの短期免許を得て、3.5, 14MHzのCWで運用したと、アンケートを寄せてくれた(写真5及び6)。「チェコからの帰りの週末に寄りました。JA免許では許可されないと聞いていましたので、相互運用協定のあるFCC免許で申請しました。免許は3ケ月まではOZ/Own Callで許可され、375デンマーク・クローネ(約7,000円)と大変高いです。私の場合、単価2,000円/日、300円/QSOです。この免許でOYは出られますが、OXは不可です。ホテルの窓(約20m高)から短縮DP+50Wで運用し、15カントリー(OKの時となぜか同じ)、2大陸とQSO出来ました。運用は約5時間です。OZ/AH0AVは珍しいコールサインなのか(珍しいでしょうね。デンマークでサイパンの人は見ないでしょう)、QSLカード是非送って下さいという話が多かったです。(1995年10月記)」


写真5. OZ/AH0AV福島誠治氏の免許状。(クリックで拡大します)


写真6. OZ/AH0AV福島誠治氏のQSLカードの表裏。

1995年 (スイス HB9LEY)

JA1LZR岩倉襄氏は、スイスで免許を得た時の様子を、関連書類のコピーと共にアンケートで寄せてくれた(写真7及び8)。「免許になった経緯は次の通りです。1995年7月3日スイスに到着。8月2日チューリッヒのPTTに問い合わせ。同日付のPTTより手紙と共に、免許の申請用紙を受け取る。8月14日パスポートのコピー、労働許可証とFCCライセンスのコピーを添付して、免許申請書を提出。8月23日付で連邦PTTより許可する旨の連絡を受ける。8月29日チューリッヒのPTTより、HB9LEYで免許される。9月7日付で90スイス・フランの手数料の請求を受け取る。(1995年10月記)」。アンケートに添えられた手紙には、「スイスの免許はFCCライセンスで簡単に、しかも短期間に入手できたことは大変ラッキーでした。アパート暮らしで思うように運用出来ませんが、このCEPTライセンスを活用して、ヨーロッパやアフリカからの運用を試みたいと思います」とありました。


写真7. (左)HB9LEY岩倉襄氏の免許申請書と、(右)それを許可する旨のレター。


写真8. HB9LEY岩倉襄氏の免許状。

1995年 (英国 GB4SUK)

JA3AER筆者は、勤務先のシャープ英国生産会社(SUKM)のオープンデーに、特別コールサインGB4SUKの運用許可を得て、運用した記録を残していた(写真9~11)。「シャープ株式会社の英国生産会社は、創立10周年を記念してオープンデーを開催することになった。これは従業員の家族だけでなく、地域の人達を工場に招き、生産工場を見学して頂くと共に、日系企業であることから駐在員やその家族が日本の文化を紹介し、地域社会の人々と交流を図る場としたものである。その1つの催しとして、ローカルのアマチュア無線家の協力を得て、アマチュア無線局の公開運用をすることにした。そのための特別コールサインを申請するにあたりGB2SUK(SHARP U. K.)を申請したところ、このコールサインは既にソニー株式会社が使用しているとの事、仕方なくGB4SUKのコールサインで運用許可を貰った。1995年7月8日当日は朝からGW3UOO, DerekとGW4HER, Sylvia夫妻、GW0MVL, Ianの協力を得てSUKMの事務棟の一室に無線機を持ち込み、その屋上にアンテナを設置、運用を開始した。午後からは、当地レクサム(Wrexham)市の市長ご夫妻にも、GB4SUKの運用を見学頂いた。14MHz, SSBなどでヨーロッパを中心に40局余りとQSO出来、ゲスト帖にはGW1AXT, GW3GSJ, GW1HFW, GW6SZF, GW3RBM, GW7OKIなどのサインがあった。尚、GW1AXT, PhilipはSUKMの営業担当社員、GW3UOO, Derekはシャープ英国販売会社(SUK)の社員である。(1995年7月記)」


写真9. (左)シャープ英国生産会社創業10周年記念のオープンデーのチラシ。(右)RSGB発行の、特別コールサインGB4SUKの運用許可証。


写真10. (左)シャープ英国生産会社の建物。(右)GB4SUKを運用する、左からGW4HER, Sylvia、GW1MVL, Ian、GW0UOO, Derekの各氏。


写真11. (左)レクサム市長夫妻にGB4SUKの公開運用を案内する筆者、運用はGW1MVL, Ian。(右)GB4SUKのQSLカード。

1995年 (アイスランド JA3IG/TF)

JA3IG葭谷祐治氏は、アイスランドからJA3IG/TFのコールサインで免許を得て運用したと、ライセンスのコピーと共にアンケートを寄せてくれた(写真12)。「AAコンテスト参加の予定で、首都レイキャビク(Raykjavik)の近くのGROTT Is.からQRVしましたが、Poor Conditionのため、JAとは僅か12局とのQSOでした。アンテナは八木ビームとデルタループ。リグはFT-900でした。TFからのファースト・ライセンスJA局でした。(1995年7月記)


写真12. JA3IG/TF葭谷祐治氏の免許状。

「あの人は今(第23回)」JR1KWR大久保明氏

ヨーロッパが大好きなJR1KWR大久保明氏の、G0LHBとしての英国での運用については、(その52)2017年7月号に紹介させて頂きましたが、その大久保氏から、近況をお知らせ頂きましたので、ここに紹介させて頂きます(写真13及び14)。「1970年夏に東京都中央区でJR1KWRを開局、昨年開局50周年を無事に迎えることができました。子供の頃からヨーロッパに憧れ、DX・QSOで強い刺激を受けました。バックパッカーとして、ヨーロッパ18カ国80都市をユーレイルパスで旅し、将来はヨーロッパに住んでみたいと思うようになりました。念願がかなって、1986年冬にロンドン駐在の機会を得たのですが、ドイツのようにJAと相互運用協定がなく、RSGBの試験に合格して1989年春にG0LHBをロンドンで開局しました。ファーストフロアのバルコニーに、目立たない様に壁と同じ白色に塗った14MHzのモービルANTを運用時だけ置いてDXをスタートしました。その後1990年にバークシャーの田舎に引っ越したので、4バンドバーチカルANTを裏庭に建て、外から目立たない様に1メートルの高さで運用を始めました。それでもコンディションが良く、28MHzでJAとラグチューができ、毎日アクティブに運用したのですが、TVIで苦情を受けて即QRTすることになりました。80カントリーをゲットできました。英国で多くのJAハムと親交を深めることができ、長いハムライフで大きな宝物となりました。2001年春に運よく英国の同じ場所に赴任となり、再度G0LHBを開局しました。裏庭の木にG5RVを枝に隠れるように張ってDXを始めましたが、コンディションが前回の1990年頃と比べてかなり悪く、なかなかニューが増えませんでした。それでも前回と合わせて110カントリーをコンファームしてDXCCの賞状がARRLから届いた時の嬉しかった思いは、今でも忘れません。


写真13. (左)G0LHB大久保明氏の裏庭に張られたG5RVアンテナ。(右)G0LHBのシャックにて、DXCCの賞状を手にした大久保明氏。

その後2003年春に米国NJに転勤しました。ハムライフのお土産にExtraの試験に合格して2005年春にAB2UDを開局しました。米国滞在中は、デイトンハムベンションを訪問、ARRL訪問ではW1AWを運用しました。残念なことに、8階のアパートにANT設置が出来ず、QSOしないでその秋に帰国しました。


写真14. (左)デイトンハムベンションにて、WR6M名黒和史氏とAB2UD大久保明氏。(右)ARRLのクラブ局W1AWをゲストオペするAB2UD大久保明氏。

帰国後は、マンション住まいでANTの制約から、思うように運用できませんが、JAの局免は忘れずに更新しています。当初FCCのライセンスで更新していたのですが、英国のCEPTライセンスが永久ライセンスになり、現在は英国の免許で更新しています。毎年東京ビックサイトのハムフェアで、海外でアイボールQSOいただいたOMさんとの再会を楽しみにしているのですが、昨年はコロナでかなわずとても残念です。最近は、電子本作家として2014年から「ヨーロッパシリーズ写真集」をキンドルから22冊出版しています。相変わらずヨーロッパが大好きで、毎年ヨーロッパ旅行をしていたのですが、コロナで昨年の予約は全部キャンセルとなりました。そんな訳で、もっか「東京シリーズ写真集」に取り組んでいます。(2021年2月記)」尚、大久保氏の「ヨーロッパ写真集」のホームページは、tabics.comです。

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